本研究の最終年度である平成29年度は、これまでの研究成果の発表と、研究の成果と課題を今後の研究計画につなげるための準備作業を進めた。研究成果の発表については、まず、二つの学会での報告を行った。6月には、関西学院大学で開催された、大阪歴史科学協議会大会で、沖縄返還後の日米安保体制と沖縄米軍基地について報告した。また同じ月、オーストラリアのウーロンゴン大学で行われた、Biennial Conference of the Japanese Studies Association of Australiaで戦後沖縄の米軍基地問題の歴史について報告を行った。これらの学会では、様々な質問やコメントが出され、今後の研究のヒントを得ることができた。第二に、いくつかの論文を発表した。まず、沖縄国際大学での公開講座をもとにした『法と政治の諸相』に本研究の成果を概略した「海兵隊の沖縄駐留の歴史的展開―1950年代と1970年代を中心に」を寄稿した。また、前述の学会発表の内容をもとにした論文を『歴史科学』に寄稿した。さらに、今後の研究に向けて、「サンフランシスコ講和における沖縄問題と日本外交ー『残存主権』の内実をめぐって」と題する論文を執筆、発表した。 今後の研究に向けての準備としては、本研究で扱った1970年代における沖縄米軍基地をめぐる日米関係から、さらにその前後に分析の射程を広げるべく、沖縄戦からサンフランシスコ講和条約締結までの時期や、1980年代から冷戦終結直後の時期について、史料調査や文献調査、関係者へのインタビューを行った。史料調査では、国立国会図書館憲政資料室のマイクロフィルムや外務省外交史料館、沖縄県公文書館の史料を収集・分析した。また近年多く発表されている戦後沖縄米軍基地をめぐる日米関係についての先行研究を調査した。これらの暫定的な成果は、前述の二つの論文にまとめられている。
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