研究課題/領域番号 |
26780114
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研究機関 | 政策研究大学院大学 |
研究代表者 |
藤本 淳一 政策研究大学院大学, 政策研究科, 准教授 (00507907)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マクロ経済学 / 労働サーチ理論 |
研究実績の概要 |
本研究の主目的は、労働者の年齢を明示的に扱うライフサイクル・労働サーチ・マッチング・モデルを用いた、ライフサイクル上の雇用・失業問題の分析である。平成27年度には主に以下の2プロジェクトを探求した。 Fujimoto and Lee (2014)では、ライフサイクル・労働サーチ・マッチング・モデル下で特に有用な動学的契約アプローチの導入時に、最適な賃金経路が社会厚生関数によりどのように変化するかを分析している。具体的には、社会厚生が全労働者の厚生の和に等しいベンサム型と、最も恵まれない労働者の厚生に等しいロールズ型の2つの社会厚生関数を考察し、両者の下での最適賃金経路を比較した。加えて、ロールズ型社会厚生関数の下で得られた最適配分が、特定のパラメータ条件下でランダム・マッチング・モデルの市場均衡でも得られることを示した。 もう一つのプロジェクトとして、以前単独で着手していた女性労働者の雇用・失業についての研究を発展させる形で、Julen Esteban-Pretel氏(ニューヨーク市立大学クイーンズカレッジ准教授)と共同で、労働者のライフサイクル上のキャリア形成の観点から重要である非正規労働者についての研究を開始した。平成27年度にはデータや先行研究、各国法制度等を調査し、研究対象とする国を検討した。特に我が国の非正規労働者については女性比率が高いことから、研究の進捗に応じ、女性労働者に係る研究を組み合わせることを考えている。 (参考文献) Fujimoto and Lee (2014): “Efficient Risk Sharing under Limited Commitment and Search Friction”, mimeo
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではライフサイクル・労働サーチ・マッチング・モデルを用いた自他の研究を踏まえモデルの理論的特性の一層の探求を行うと共に、教育・訓練への投資や結婚・出産のようなライフサイクル上の重要イベントを導入することで、モデルを一層現実的なものにすることを目指している。
これまでの取り組みにおいて、標準的なライフサイクル・労働サーチ・マッチング・モデルの理論面については理解を深めることができた。他方、正規・非正規雇用の別やそれによる訓練への投資の差異のような要素を組み込んだより現実的なモデルの定性的・定量的な特質については、未だ不明点が多い。引き続き、モデルの全体像の解明につき、努めて行きたい。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要で述べたFujimoto and Lee (2014)についてはほぼ完成したため、早期に適切な国際学術雑誌に投稿して掲載を目指す。 非正規労働者に関するプロジェクトについてはデータの精査等を続けて分析対象国を決定し、平成28年度中に初稿を完成させる予定である。 上記に加え、近年日本で社会的関心を集めている雇用の安定性と結婚の関係についても、随時研究を開始することを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
非正規労働者の研究に関し、海外の有用だが非常に高価なデータセットを購入すべく予算を準備していたが、最終的に当該データセットを無償で研究に使用できる目途がたち購入を見送ったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究に関連する論文につき、必要に応じて国内及び海外のセミナー・学会等で発表を行うべく計画中であり、その際には渡航旅費や学会参加費を支出する予定である。また、共同研究の打ち合わせや関連分野の研究者との意見交換等、研究上の必要に応じて随時、積極的に国内外の大学等に出張することを考えている。 その他大きな支出としては、データの収集や先行文献の把握等のためにリサーチアシスタントを雇用予定である。また、研究上必要な経済学・数学・法律等に関連する書籍や、プリンタインク等の消耗品を随時購入する。論文投稿に際しては、英語の校閲を業者に委託する。
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