研究実績の概要 |
本研究の主目的は、労働者の年齢を明示的に扱うライフサイクル・労働サーチ・マッチング・モデルを用いたライフサイクル上の雇用・失業問題の分析である。本年度は主に以下の3プロジェクトを探求した。Fujimoto and Lee (2016)では、ライフサイクル・労働サーチ・マッチング・モデル下で特に有用な動学的契約アプローチの導入時の、社会厚生関数と最適賃金経路の関係を分析している。具体的には、社会厚生が全労働者の厚生の和に等しいベンサム型と、最も恵まれない労働者の厚生に等しいロールズ型の社会厚生関数の下での最適賃金経路を比較し、後者の最適賃金経路が特定条件下で市場均衡でも実現されることを示した。Julen Esteban-Pretel氏(ニューヨーク市立大学クイーンズカレッジ准教授)との非正規労働者に関する研究では、日本の労働力調査・同特別調査及びスペインの類似調査のミクロデータの提供を受け分析を開始した。また、労働市場と類似の摩擦が存在する金融市場に対し労働サーチ・マッチング・モデルを応用した共同研究を行い、Fujimoto et al. (2017)にまとめた。
(参考文献) Fujimoto, J. and J. Lee (2016): “Efficient Risk Sharing under Limited Commitment and Search Friction,” GRIPS Discussion Paper 16-15. Fujimoto J., K. Munakata, K. Nakamura, and Y. Teranishi (2017): “Optimal Policy Analysis in a New Keynesian Economy with Credit Market Search,” GRIPS Discussion Paper 16-30.
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