昨年度の研究を継続して行い、以下の2本の論文の改訂作業を行なった。 学術雑誌から改訂要求を受けていた“Optimal Sharing Rules in Repeated Partnerships”について、査読者のコメントに従い改訂を行った。査読者から論文の短縮を求められたため、命題と証明の書き方などを改訂し、再投稿した。結果、Journal of Economic Theory に掲載された。この論文は、2人のパートナーが、事前に、チーム生産の成果をどのように分けるかを選択し、そのシェアリングルールの下で、繰り返しチーム生産を行う状況を考察した研究で、チーム利得を最大にするシェアリングルールを任意の割引因子について導出した。特に、生産性が高いチームで、かつ割引因子が十分大きい状況においては、2人の協調的なチームワークが利得和を最大にし、それは、より生産的なパートナーの分け前を小さくすることで可能になることを示した。これは、生産性が低いパートナーほど、努力するインセンティブを与えるのが難しいため、彼により多くの分け前を与えなければならないからである。この結果は、パートナーシップという企業形態の難しさを教えてくれる。 対称なn人の繰り返しパートナーシップの研究“Repeated Partnerships with Decreasing Returns”については、学内の研究会や学会報告を行うなどし、改訂を進めた。そして、査読付き雑誌に近々投稿できるところまで完成した。この研究は、公的戦略ではフォーク定理が成立しない状況で、効率性を実現する条件とその戦略を明らかにしている。また、割引因子が十分1に近ければ、近似的に効率性が達成可能であることも示した。
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