研究実績の概要 |
平成26年度は、以下の3つの研究を軸に研究活動を行った。1つ目は、関西大学の中元康裕准教授と共同で論文Matsuoka and Nakamoto(Incomplete Deposit Contracts, Banking Crises, and Monetary Policy, Kyushu Sangyo University, Discussion Paper, No68, July 2014)を執筆し、ワーキングペーパーとして公表した。本研究では、銀行が不完全な預金契約しか預金者に提供できない際に、いかなるインフレ率の下で銀行危機が発生するのかを分析した理論研究である。申請者は本研究を2つの国際コンファレンスPET2014とSWET2014にて口頭で研究発表を行った。2つ目は、関西学院大学の國枝卓真准教授、京都大学の柴田章久教授と共にバブルと技術選択に関する研究Kunieda, Matsuoka and Shibata(Asset Bubbles, Technology Choice, and Financial Crises, City University of Hong Kong, Department of Economics and Finance, Working Paper: 2013039, May 2013)を改訂し、国際査読付雑誌に投稿した。3つ目は、申請者の単独研究であり、申請課題研究でもある新興国の金融危機に関する理論研究を行った。本年度は新興国における金融危機に関する論文をサーベイし、Chang and Velasco(Quarterly Journal of Economics 116,489-517,2001)に資産市場を組込んだ理論モデルの構築を行った。研究途上ではあるが、暫定的な結果を2015年日本経済学会春季大会(新潟大学)にて口頭で研究報告を行う予定である。そこでのコメントを生かし、平成27年度中に論文としてまとめワーキングペーパーとして公開する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後も上記の3つの研究を軸に研究活動を行う。具体的には、2つの共同研究Matsuoka and Nakamoto(2014), Kunieda, Matsuoka and Shibata(2013)については、国際コンファレンスにおいて研究報告を行いつつ改訂を進め、国際査読付雑誌への掲載を目指す。単独の新興国の金融危機に関する研究については、論文のサーベイを引き続き行いつつ理論の精緻化を行う。さらに、理論モデルにおいて実際に遂行された幾つかの銀行危機政策(流動性保有規制、預金保険制度、資本課税等)を数値シミュレーションを用いて評価する。本研究は、理論の革新と同時に現実的な銀行政策の評価方法を提供することが目的であるからである。平成27年度より、暫定的な研究結果を国際コンファレンスや研究セミナーで報告しつつ論文にまとめる。そして論文をワーキングペーパーとして公開し、改訂作業を行いつつ国際査読付雑誌への掲載を目指す。
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