研究実績の概要 |
平成27年度は2つの研究①、②を論文としてまとめ、ワーキングペーパーとして公刊した。 1つ目の研究は、①Matsuoka, Tarishi, Banks and Liquidity Crises in Emerging Market Economies (June 29, 2015)である。本研究はChang and Velasco(Quarterly Journal of Economics 116,489-517,2001)の銀行取付モデルに資産市場を組み込んだ理論モデルであり、新興国における資本流入と銀行危機との関係性を理論的に分析した。資本の急激な流入が資産価格の変動を大きくし、銀行危機の規模が大きくなることが示された。 2つ目の研究は、②Matsuoka, Tarishi, Financial Contagion in a Two-Country Model (March 5, 2016)である。本研究は、上記の1つ目研究①を2ヵ国開放経済に拡張させ、金融危機が資産市場の暴落を通じて伝播するメカニズム解明した理論研究である。ある条件の下では均衡下において、ポートフォリオが異なる3種類の銀行が内生的に出現し、その中の非流動的な銀行は、別の国の流動性ショックによって破綻することが示された。これは金融自由化によって各国の銀行システムが脆弱化する可能性があることを意味している。 来年度は、この2つの研究を国内外の学会で報告し、改訂を行いながら国際査読付雑誌に掲載されるよう努力する。
|