研究実績の概要 |
平成28年度は1本の単著論文「Financial Contagion in a two-country model」をworking paperとして公開し、1本の共同研究論文「The Politics of Financial Development and Capital Accumulation」(内藤克幸氏、西田圭吾氏との共著)が国際的査読付学術雑誌Macroeconomic Dynamicsに採択され近刊予定である。 前著の単著論文では、基本的な銀行理論を2ヵ国モデルに拡張し、金融自由化の影響が金融システムの脆弱性に与える影響を分析することを目的としている。両国の金融市場の統合により、ある国の流動性ショックが他国の銀行を危機に陥らせる金融伝播が生じ,経済厚生を悪化させる可能性があることを示した。さらに当初対称であった国々が、金融の自由化により脆弱性の異なる国々に分裂する、いわゆる``対称性の破れ"の現象が生じ得ることを示した。 後著の共同論文では、金融市場の不完全性及び所得格差が存在する経済の下で、政治的制度がいかに金融市場を発展させるか、または阻害させるかについての理論的分析を行った。金融市場を改善させる様な政策が、中間所得者層には恩恵があるものの、高所得・低所得者層には負担となることを示した。さらに所得格差が大きな経済では、金融市場を改善させるような政策が実施されず、経済発展が阻害され得ることを示した。 研究期間全体において、上記の共同研究論文が国際的査読付学術雑誌に採択され、5本の研究論文をworking paperとして公開した。今後これらを持続的に改訂しながら、研究報告を重ね、最終的に国際的査読付学術雑誌に掲載されることを目指す。さらに貨幣サーチ理論の分野に銀行を導入し、銀行危機とインフレ率との関係性を分析することを今後の課題とする。
|