現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
名目金利の非負制約を考慮した動学的一般均衡モデルの解法には、Jung, Teranishi, and Watanabe (2005)、Eggertsson and Woodford (2003)、Bodenstein, Guerrieri, and Gust (2013)が用いている線形モデルの解法を応用した解法と、Fernandez-Villaverde, Gordon, Guerron-Quintana, and Rubio-Ramirez (2012)やGust, Lopez-Salido, and Smith (2012)が用いているモデルを非線形のまま取り扱う解法があり、本年度までに実施した研究では、前者の解法について検討を行った。こうした解法を、日本のマクロ経済データを用いた実証分析と推定パラメータのバイアスに関する分析に応用し、上記2本の論文を作成したことから、おおむね順調に進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、名目金利の非負制約を考慮した動学的一般均衡モデルを取り扱う際に、モデルを非線形のまま取り扱う解法について検討を行い、実証分析への応用を目指す。特に、Heer and Maussner (2009)で紹介されているparameterized expectations法やprojection法が有力な手法であると考えられることから、こうした数値計算手法の習得にも注力したい。 また、正の目標インフレ率周辺での均衡とデフレ均衡の間を時間の経過とともにスイッチする可能性を考慮した動学的一般均衡モデルの解法についても検討を行う。 モデルの解法に関する問題が解決したところで、どのような推定手法を採用すべきかを検討する。完全に非線形なモデルの尤度関数を評価する方法として、particle filterと呼ばれる手法が開発されているが、計算負荷が極めて高く、既存のPCでは極めて単純なモデルしか推定できない。本研究では、Gust, Lopez-Salido, and Smith (2012)による効率的なparticle filterの活用を検討するほか、simulated method of momentsやインパルス応答関数によるminimum distance estimation等のシミュレーション・ベースの推定方法も試す。
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