本研究の実績は,研究会・学会報告10回,論文4本(うち学会誌1本。投稿中の論文は含まない),共著書4本である。本研究では,アダム・スミス以後の経済学の展開において,貧民救済が重要な要をなしている点に焦点を当てながら研究に取り組んだ。特に,デュガルド・スチュアートの貧民救済論の核となる,彼の経済学と政治学との関連について検討を重ねた。スチュアートに限らず,この時代の救貧法に関する未邦訳の英字文献等を読み進めながら本研究を進展させた。 本研究の最終年度では,デュガルド・スチュアートの『政治経済学講義』(1800-1810年)の解釈をめぐる研究として,スチュアートとコンドルセの完全可能性の哲学に関する研究を行った。スチュアートの『講義』の第2編「国富について」を中心に,その解釈をめぐる諸論点について考察した。そのほかに,デュガルド・スチュアートの『人間精神の哲学要綱』(1792年)と『ブリタニカ百科辞典』第5版補巻に所収された論文「ヨーロッパにおける文芸復興以来の形而上学,倫理学および政治学の発展についての全般的展望」(1815-1821年)の中で論じられた,チュルゴーやコンドルセ等のフランス・エコノミスト哲学へのスチュアートの批評を中心に研究した。それと同時に,コンドルセの完全可能性の哲学とスチュアートの人間精神の哲学とを比較検討した。その成果として,この主題について2018年6月にマルサス学会大会で学会発表を行った。その後,チュルゴーやコンドルセ等のフランス・エコノミスト哲学へのスチュアートの批評を中心に研究をさらに深めると同時に,上述した本研究のスチュアートの貧民救済論の成果の一部を加えて,2018年度内に,学会誌(荒井智行「デュガルド・スチュアートとコンドルセの「完全可能性」の哲学」,『マルサス学会年報』第28号)に論文を投稿した。
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