研究実績の概要 |
本年度は、論文の作成に加えて、国際学会での三つの別々のテーマでの報告を行った。 第1に、アメリカはミシガン州立大学での、経済学史研究に関する国際学会であるHistory of Economics Societyにおいて、"Commerce, economic development, and equilibrium in Montesquieu, Hume, and Smith"と題して、古典派経済理論の形成と欲望の関係に取り組み、日本人として唯一の報告者であったが、会場からは活発な質疑応答が得られたほか、少なからぬ人が興味を寄せ、ご評価頂いた。 第2に、4年に一度した行われない国際18世紀学会の、オランダ・ロッテルダムにての大会において、"Adam Smith on the value of silver"と題して、人間の欲望の対象である銀について、なぜ人間は欲望の対象として価値をあたえるのか、銀の価値をスミスはどのように捉えたのか、という観点から報告を行い、活発な討議が行われた。 第3に、小樽商科大学での、日本とヨーロッパの経済学史学会合同の国際学会にて、"The effects of commerce and war in Adam Smith"と題して、経済学上の欲望についての考えが、戦争を対極としたものとして形成されたものであることを明らかにした。 また、「アダム・スミスにおける貧困対策問題」と題して、人間の基礎的欲望の欠如の問題にスミスがどう向き合ったかを論文にした。さらに、イギリス・スコットランドにおいて資料調査を実施し、スミス周辺の人物の、未刊の原稿の調査と精力的な撮影を実施した(ジョン・ミラー、アンダーソンら)。
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