研究実績の概要 |
株式市場の取引構造の変化が株式市場の変動の構造変化として現れたかどうかを検証するために,株式収益率のボラティリティと呼ばれる変動の大きさのモデルとして,確率的ボラティリティ変動モデルを使用し,そこに高頻度データから計算される実現ボラティリティと構造変化の性質を導入する研究を行った.特に,市場の取引構造の変化をモデルに導入して影響を調べるために,近年の構造変化モデルに関してサーベイを行った.その結果の一部を景気変動に応用した研究としてまとめ論文として公刊した(石原・渡部(2015)). 平成26年度に行った研究においては,日本市場における高頻度取引システム導入日前後による構造変化が単一の実現ボラティリティを導入した確率的ボラティリティ変動モデルではとらえられないことが分かった.その結果を受け,本年度はより細かいレベルへの変動を調べるために,収益率の変動の分解する研究を行った.実現ボラティリティ推定量には様々なタイプのものが提案されているが,正負のジャンプを検出するのに用いられる推定量も提案されている.そこでいくつかの異なった性質を持つ実現ボラティリティを導入し,正負のジャンプのような瞬間的に起こる大きな変動と連続的な変動を分離する手法を提案した.途中結果は国際学会で発表を行った(Ishihara(2015),(2016)の口頭発表).提案した手法は,単一の実現ボラティリティを導入したモデルと比較して収益率の変動をよりよくとらえることができた.今後は各レベルの変動に構造変化が起こったかを検証する予定である.
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