研究課題/領域番号 |
26780136
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
難波 明生 神戸大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (60324901)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 構造変化 / ブートストラップ法 |
研究実績の概要 |
前年度までの分析においては、構造変化時点が既知であるモデルに対しての構造変化の検定を分析したが、本年度は、前年度までの分析を拡張し、構造変化時点が未知であるモデルにおける構造変化の検定を分析対象とした。このようなモデルの場合は、モデルを構造変化前と構造変化後に前もって区分することができないため、モデルの平均とともに分散も変化する可能性がある場合には、シンプルなブートストラップ法を用いることができない。 そこで、分散不均一性を含むモデルに対しても応用可能なワイルド・ブートストラップ法を応用することを考えた。分析の下準備として、まず分散が不均一な分布から得られた確率変数の平均に関する検定に対してワイルド・ブートストラップ法を応用し、その効果をコンピューター・シミュレーションにより分析した。シミュレーションの結果から、このような場合には、通常の正規近似による検定がかなり高い精度を持つが、ワイルド・ブートストラップ法のパフォーマンスも良好であることが確認された。この結果を踏まえて、構造変化を含む回帰モデルにワイルド・ブートストラップ法を応用し、そのパフォーマンスをコンピューター・シミュレーションにより分析した。分析の結果、構造変化時点が未知の場合でも、ワイルド・ブートストラップ法を利用することにより、漸近理論に基づく検定の結果を大幅に改善できることが示された。また、シミュレーションの結果からは、仮にモデルの分散が変化しない場合でも、漸近理論に基づいた検定を行うよりも、分散の変化の可能性を考慮したワイルド・ブートストラップ法を用いた検定の方が精度が高いことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までの研究により、構造変化時点が既知の場合には、モデルを構造変化時点の前後に区分してブートストラップ法を応用することにより、通常の検定の精度を改善できることが示された。また、本年度の研究においては、構造変化時点が未知の場合で、平均とともに分散が変化するようなモデルの場合でも、ワイルド・ブートストラップ法を応用することにより、通常の検定の精度を大幅に改善できる可能性があることが示された。以上の結果から、ブートストラップ法の応用は、構造変化に対する検定に対して非常に有効であることが示唆された。このことから、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究におけるシミュレーションで用いられたモデルは、比較的シンプルな構造を持つものである。より一般的なモデルに対する分析は今後の検討課題である。また、いくつかの先行研究においては、ワイルド・ブートストラップ法よりもブロック・ブートストラップ法の方がより望ましい結果を得られる可能性が高いと述べられている。このような方法との比較も、今後の研究により分析していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は予定通りに進め、国際会議での報告及び研究打ち合わせのための出張を予定していたため、一部予算の前倒し請求を行った。しかし、国際会議出席のための旅費は別の予算から支払われ、また日程調整が困難であったことから出張を先送りしたため残額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
残額分については、本年度の予算と合算し、研究に必要となる設備・消耗品等の購入及び旅費として執行する予定である。
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