これまでに引き続き、構造変化を持つ可能性のある計量モデルに関する分析を行った。構造変化を持つ可能性のあるモデルにおける分析では、多くの場合、構造変化の有無をデータに基づいて検定し、得られた結果に応じてモデルに構造変化を含めるか否かを選択し、選択されたモデルに基づいて分析を行うという方法が取られている。これに対し、Hansen (2009)は、構造変化を持つモデルと持たないモデルのどちらか一方がを正しモデルとして選択し、一方のモデルに基づいてのみ分析を行うよりも、両方のモデルの加重平均を用いた方がより良い予測が得られる可能性がある可能性を示している。Hansenのこのような考え方はモデルアベレージングと呼ばれる考えに基づいたものであるが、結果として得られた推定量は、計量経済学において縮小推定量と呼ばれるタイプの推定量になっている。縮小推定量は、その優れたパフォーマンスにより古くから分析対象となっており、Hansenによる推定方法の優位性も、その縮小推定量としての構造から得られていると解釈できる。そこで、本年度は、伝統的な縮小推定量を構造変化を含む可能性のあるモデルに対して応用した場合に、どのようなパフォーマンスが得られるのかを分析した。分析の結果から、構造変化が無いものと仮定して得られた伝統的な縮小推定量は、実際には構造変化があった場合でも、優れたパフォーマンスを持つことが示された。 また、前年度までの分析をまとめた論文の一つを国際会議で報告した。同論文は査読付きの英文専門誌に掲載が決定した。
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