研究3年目は、1年目と2年目に得られた研究成果を用いて、現実のデータに応用する研究を行った。1年目と2年目においては、以下のような成果を得られた。1年目は、2つの分布が加法的に混ざっている2値変数の有限混合モデルは識別不可能であるが、連続変数との同時方程式モデルであれば識別可能であることが導かれた。2年目は、有限混合モデルにおける要素密度の個数を特定化するための、検定統計量を開発した。有限混合モデルにおいては、要素密度を足すことでいくらでも密度の近似の程度が上がり、過剰識別が生じやすい。そのため、モデル選択において尤度比検定を適用することができない問題が発生する。そこでVuongの非入れ子型の検定統計量を用いて、要素密度の個数特定化を試みた。ラプラス近似を用いたVuong検定であれば、真の定式化が未知であっても、サンプルサイズが大きくなれば検出力が高くなり、第1種過誤も小さい傾向が認められた。
研究3年目は、1年目と2年目に得られた研究成果を用いて、現実のデータに応用する研究を行った。データは、日本版総合社会調査(JapaneseGeneral Social Survey、JGSS)や老研-ミシガン大全国高齢者パネル調査等を予定していたが、当該分野での研究成果が蓄積されておらず、先行研究との比較が誰でもわかるようにするために、より汎用性のデータを用いることとした。具体的には British Household Panel Survey (BHPS)、および Health and Lifestyle Survey (HALS) である。これらのデータの一部は教育目的で完全に公開されており、また多くの研究者にとってはなじみのあるデータであるので、これを採用した。研究結果を現在まとめている段階であり、順次投稿する予定である。
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