当該研究課題達成に向けて、先行研究の整理、理論モデルの構築、および集計データを用いた予備的分析を行った。 先行研究の整理より、歴史的な就業構造と経済全体における就業構造の変化を操作変数として用いる手法の有効性は、今日においても依然として高いことが明らかになった。また本手法の応用範囲は広く、公務員数だけではなく、製造業における雇用者数が地域に与える波及効果についても、多くの考察がなされていることが明らかになった。 また近年、経済の効率性と公平性をともに考慮に入れた一般化社会厚生関数を用いた政策効果のモデリングが注目されていることも明らかになった。この手法を応用することで、本研究は効率性だけではなく公平性への含意も含んだ政策議論が可能になることが期待できると思われた。 その後、一般化社会厚生関数を用いた理論モデルの構築を行った。その結果、幅広い社会厚生関数の定式化の元で、公務員数の変化が地域の経済厚生への影響を推定する上で、必要なパラメータの絞込みに成功した。その中でも特に、地域の可処分所得、就業率、労働力人口の公務員数に対する弾力値が重要であることが明らかになった。また通常の完全競争的労働市場だけではなく、摩擦的労働市場を想定したとしても、推定すべきパラメータはほとんど変化せず、同じ分析フレームワークを用いることが可能であることも示せた。 最後に地域の総雇用者数を用いた予備的推計において、理論予測どおり、地方公務員の増加は地域の雇用を拡大する効果が推計された。しかしその効果は弱く、より詳細なデータを用いた検証の重要性も確認された。
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