研究課題/領域番号 |
26780148
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
川崎 晃央 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (10452723)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 空港民営化 |
研究実績の概要 |
本年度は,民営化された空港に対し,どれだけの路線が開設されるか,また関連研究として民営化された空港が乗継客を維持するような料金設定を行うインセンティブを持つか否かについて分析を行ってきた.その結果,航空会社間の競争の程度,並びに乗継客の支払意思額の大きさによって,ハブ空港は乗継客を排除するような料金設定を行うインセンティブがあることを明らかにした.これは,ハブ空港が乗継客に利用させるためには料金設定を下げる必要があることに起因し,乗継客を利用させるために直通便を利用する乗客に対しても低い料金を設定するより,乗継客を排除して直通便を利用する乗客に対して高い料金を設定するほうが,民営化されたハブ空港にとって望ましいことを意味している.また,競争関係にあるハブ空港は,ある1つのハブ空港は乗継客を排除しないが,競争関係にあるハブ空港は乗継客を排除する,という均衡も存在することを明らかにした. 次に,民営化されたハブ空港に対して,どの程度の路線が開設されるかについて分析を行った.その結果,地方空港の数によって,最適な海外から開設される路線数に違いが出ることが明らかとなった.つまり,地方空港の数が少ない場合には,すべての地方空港に海外からの路線が開設されないほうが望ましいが,多い場合にはすべての地方空港に海外から路線が開設されるほうが望ましい.また海外の航空会社は,路線開設コストに依存して参入する地方路線を決定するが,その際に実現する路線数は,国の社会厚生の視点から見た時に最も望ましくない状態になる可能性が存在することを明らかにした. その他,空港民営化の研究論文から派生させた空港料金政策に関する研究論文,密度の経済性が民営化に与える影響についての研究論文を発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
空港民営化に関わるベースとなる研究論文が,国際雑誌に掲載されるとともに,関連研究論文をそれぞれ専門の国際雑誌へ投稿し,査読を受けている.加えて,国内の学会誌に密度の経済性が空港民営化にどのような影響を与えるかについて分析した研究成果の一部を掲載させた.また,一方で密度の経済性が民営化に与える影響について分析している研究成果全体をまとめた論文については,雑誌に投稿,その後修正作業をはじめており,修正の方向性を固めている. さらに,空港路線を加味した料金設定に関わる研究を松島氏(大阪大学)と共同でスタートさせ,一定の結論が得られている.当該研究論文は応用地域学会にて報告を行い今後の課題などについての議論まで終了している.その後,鹿児島大学で研究論文の修正の方向性などについても打ち合わせを済ませ,現在細部の修正に着手している. また,単独で進めている路線数の内生化に関する研究は,モデル構築及び分析が一通り終了し,海外の航空会社がどの程度の地方路線に参入するのか,またその時に実現する国内の社会厚生がどのようになっているのかについて,一定の結論が得られている.この研究は今後,論文にまとめていくだけの段階に来ている.
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今後の研究の推進方策 |
現在,空港民営化から派生させた空港料金政策に関わる研究論文1本を国際雑誌に投稿し,査読を受けている段階である.査読の結果が届き次第,適切な修正を施す予定である.また,密度の経済性が空港民営化に与える影響について議論した研究成果の完成版の研究論文は修正の方向が決まっているため,今後分析結果の最終確認をしたうえで,論文を修正し,国際雑誌へ投稿する予定である. 松島氏と進めている研究論文は,現在細部修正中であるが,打ち合わせなどは順調に進んでおり,平成29年度中には投稿する計画である. 路線数を内生化した研究論文は分析まで終了しているので,平成29年度中に論文の形にまとめ上げたうえで,応用地域学会,あるいは日本応用経済学会秋季大会での報告を計画している.学会での報告を通して,モデル分析上に問題がなければ,早い段階で国際雑誌,あるいは国内の学会誌への投稿を,修正が必要な場合には適切な修正を加えたうえで,学外のワークショップなどで報告し,平成29年度中には国際雑誌,あるいは国内の学会誌へ投稿する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
国際ジャーナルへ投稿している論文の査読が遅れているため,投稿論文の修正のための費用,並びにリプライレター作成のための英文校正費が残額として残った.また,当初,秋季日本経済学会に参加する予定にしていたが,学内業務の都合で出席できなくなったため,学会参加のための予算が残額として残った.
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次年度使用額の使用計画 |
現在,4本の論文を執筆しているため,これらの論文の英文校正費として支出する予定である.加えて,投稿料が必要な雑誌も存在することから,雑誌への投稿料として支出する予定である.また,4本の論文のうち2~3本の論文は学会やワークショップで報告を予定しているため,それらの旅費に支出する予定である.
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