研究課題/領域番号 |
26780151
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研究機関 | 長崎県立大学 |
研究代表者 |
和田 一哉 長崎県立大学, 国際情報学部, 講師 (70589259)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 途上国 / 期待形成 / 教育投資 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ケニアとインドの農村を事例に、人々の教育に対する認識や期待形成が将来の経済開発にいかなる影響をおよぼすかについて検証するものである。教育の促進に対しては、子供の能力に対する教員・親の認識や期待形成がきわめて重要な役割を果た す可能性があるが、国によって、あるいは社会経済状況によって、その意味は一律でない。この点に留意し、本研究では①教員・親の認識や期待形成プロセスとその影響、②人種や民族による影響の差異、③経済環境の変化のインパクト、の分析を通じ、教育環境と社会経済がともに大きく異なる発展段階にある二ヶ国における教育の動向に関して分析を行い、将来の経済開発の可能性を考察する。 これらの研究目的を達成させるために、既存の家計データを利用し分析を行うことに加え、二つの途上国の農村で現地調査を実施して得られた家計データの実証分析も併せて行っている。実際の研究作業の大枠は次の二つである。(1)インドのNational Family Health Surveys(NFHS)という大規模家計データを用いた実証研究に加え、(2)ケニア東部州キツイ県の農村において家計調査を進めている。2015年度は上記(1)の成果として日本語での論文刊行に加え、"Demographic Change and Women's Status in India"と"What is Participation for Development? Econometric Evidence from India"という二つの研究についてそれぞれ別の国際会議にて発表した。これらに関しては現在、学術雑誌での論文刊行作業を進めている。また(2)については、前年度に実施した農村家計調査のデータ入力・チェック作業を終えるとともに、農村家計への教育と雇用に関する情報提供を含む現地調査を引き続き実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に引き続き2015年度も当初の予定通り、インドの大規模家計データの整理と実証分析を、そしてケニアの農村において現地調査を実施した。これらの作業は、ほぼ当初の計画通り作業は終了している。 インドの大規模家計データを用いた実証研究に関しては、学会や研究会での研究報告を重ね、そこで得たフィードバックを改訂作業に活用し、論文執筆・刊行を進めている。National Family Health Surveysを用いた実証論文である「女性の自律性とその要因:インドのマイクロデータを用いた実証分析」は、すでに『現代インド研究』誌にて刊行済みである。またシリーズ『激動のインド』において、「インドにおける性別選択による産み分けの動向:National Family Health Surveyを用いた実証分析」、「生きる:人口動態をめぐる変化」などを刊行済みである。これに加え、"Demographic Change and Women's Status in India"と"What is Participation for Development? Econometric Evidence from India"という二つの論文について、それぞれ別の国際会議にて発表済みである。 ケニアでの現地調査に関しては、ベースラインとなるデータ整理に時間を要し若干遅れが生じたものの、2015年度の調査では前年度に引き続き農村家計への情報提供などの社会実験を併せて実施するなど、現時点では当初の計画どおり進行中である。 以上のように、ケニアの農村を対象とする作業に関し、ベースラインとなるデータ整理に時間を要するなど若干遅れが生じたが、実証分析の実施、学会等での発表、論文執筆・刊行に関してはほぼ当初の予定通りの形で進んでいる。現地調査もほぼ当初の計画通り実施済みであり、全体としては、概ね計画通り順調に進捗していると考えて良い状況である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に引き続き2015年度も当初の予定通り、インドの家計データの整理と実証分析を、そしてケニアの農村において現地調査を実施した。家計データの整理と実証分析に関しては、ほぼ当初の計画通り作業は終了している。このため、最終年度もスムーズに研究計画を遂行できるものと見込まれる。 ケニアの現地調査に関しては、2014年度に引き続き2015年度もほぼ実施計画を予定通りに終えることができた。2014年度の現地調査では社会実験を行ったが、Bioversity International(World Agroforestry Centre内、ナイロビ)のカウンターパートと協議の結果、2015年度にも追加的な社会実験を実施することとなった。またベースライン調査で得られたデータの入力・チェック作業を終了し、現在子供の教育投資に対する親の期待形成等について記述統計の分析を進めているところで、2016年度2-3月に予定している最終調査に向けての材料とする予定である。 インドの既存データを用いた研究に関しては既に論文をいくつか刊行済みであるが、現在NFHSを用いた別の実証研究として、、"Demographic Change and Women's Status in India"と"What is Participation for Development? Econometric Evidence from India"の二つを国際会議にて発表済みである。前者については現在学術雑誌での論文刊行作業を、後者については2016年度に国内学会等においても発表することが決まっており、そこで得られたフィードバックを活用して学術雑誌に投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ケニアの農村における現地調査について、現地調査員の質が高かったこととによって当初予定していた予備的調査を短縮でき、予算を若干節約することが可能となったことが主な理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度に行われる最終調査では、多くの質問項目を調査票に含めることになるため、多くの調査人員と時間が必要になることが見込まれる。次年度使用額は、これらに充当する予定である。
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