本研究の目的は、ケニアとインドの農村を事例に、人々の教育に対する認識や期待形成が将来の経済開発にいかなる影響をおよぼすかについて検証することとした。教育の促進に対しては、子供の能力に対する教員・親の認識や期待形成がきわめて重要な役割を果たす可能性があるが、国によって、あるいは社会経済状況によって、その意味は一律でない。この点に留意し、本研究では①教員・親の認識や期待形成プロセスとその影響、②人種や民族による影響の差異、③経済環境の変化のインパクト、の分析を通じ、教育環境と社会経済がともに大きく異なる発展段階にある二ヶ国における教育の動向に関して分析を行い、将来の経済開発の可能性を考察するものである。 インドとケニアにおける研究の概要は以下の通りである。まずインドに関しては、現地調査データ収集・整理と併せ、既存データを活用した実証分析を進めてきた。特に家庭内における母親と父親の意思決定過程への参加に対する認識と、子供の教育に対するその影響に注目した研究として、"What is Participation for Development?"を国内外の学会にて発表した。またケニアに関しては、子供の教育に対する両親の期待形成について、調査対象村の400家計についてベースラインとなる調査を行った後、半数の200家計において教育に対する認識の改善を意図したtreatmentを実施している。最終年度はその影響を評価するための現地調査を実施し、現在データ入力作業を進めているところである。
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