平成27年度は、前年度に行った非関税障壁の企業への影響の分析をより精緻化させた。 前年度は費用構造や輸出行動に対して非関税障壁と考えられるRoHS・REACHがどのような影響を持つか検証を行ったが、ここに、ベトナムの産業連関表を用いて作成した川上・川下産業との関係性の変数を加えることで、RoHS・REACHの実際の規制国であるEUからの直接的な要請なのか、それとも川上・川下産業との繋がりが強くなることで、取引維持あるいは拡大のための間接的な要請によるものなのかを検証することができる。分析の結果、後者のような間接的な効果はあまり見られず、やはり直接的に規制市場と繋がっていることが重要であることが明らかになった。 以上の結果について、費用構造への影響と、輸出行動への影響に分け、それぞれ論文としてまとめたものをアジア経済研究所の研究書籍に寄稿した。この成果は平成28年度中に出版予定である。 また、今後引き続き国際企業と規制との関係性を研究していくにあたり、規制により企業の小売がどのように行動を変化させるのかについてを、前段階として予備的に分析した。Berry et al.(1995)による構造推定アプローチを用いて厚生分析を行ったところ、価格の低下と質の向上から消費者の厚生が改善していることが確認され、その要因として、企業のマークアップが変化していることが考えられる。業態によって需要の価格弾力性が異なるため、今後はその精緻な計算を行うことで、企業のマークアップがどのように変化していくかを検証し、これを国際企業の場合へ拡張していくことを検討している。 この結果については、内閣府ESRIの国際コンファレンスにて、共著者より報告を行った。
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