研究実績の概要 |
26年度には、VARモデルを推計し、分析を行った。得られた主要な結果は次の通りである。ペッグ制と比べ、変動相場制の下ではRER変動における為替レート特殊ショックの寄与度がかなり高くなる。また、RER変動において最も重要な要因は総需要ショックである。これらの結果より、為替制度設計の際に政策当局は、ファンダメンタルズのショックへの調整のために為替レートの伸縮性を確保することと、為替レート特殊ショックによって引き起こされる為替レートの望ましくない変動を制限することの間にトレードオフに直面することが示唆される。本研究の主要な貢献は、このように為替制度設計におけるトレードオフを指摘し、それについて定量的に分析する枠組みを提示することであると考える。本研究の結果を"Exchange Rate Regimes and the Sources of Real Exchange Rate Fluctuations: Evidence from East Asia"と題する論文にまとめ、the 14the International Convention of the East Asian Economic Association (2014年10月), 及び the 11th International Conference of the Western Economic Association International (2015年1月)で報告した。 27年度には、学会で受けたコメントを踏まえ、本研究においてVARで符号制約を課す際に理論的枠組みとして用いる開放マクロ経済モデルを再構築し、解析的な解を求めることに成功した。また、実証結果に基づき東アジア諸国の為替制度選択問題に対するインプリケーションを考察し、その記述を論文に新しい節として追加した。本論文の新版は、27年4月に明星大学経済学研究科ディスカッションペーパーNo.31として掲載された。現在、本論文を国際ジャーナルへ投稿しているところである。
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