最終年度には、風力発電と太陽光発電の組合せによる普及速度の変化について、研究を行った。データを用いて推定を行った結果、①風力発電が導入された市町村では太陽光発電の普及が進むこと②価格弾力性で測った太陽光発電に対する補助金の効果自体は変化がないこと③風力発電の設置主体が地方自治体であることによる追加的な効果は見られないこと、が示された。 このことから、①太陽光発電のように各世帯が導入するか否かを決定する再生可能エネルギーの普及において、より大規模な再生可能エネルギーの事前導入が一定の役割を果たすこと②しかしながら、その設置主体は必ずしも地方自治体である必要はないこと、の2点が示された。 研究期間全体を通じて、以下のことが示された①太陽光発電導入促進補助金には一定の効果があったこと②その効果は特に政策導入初期においては高く、時間とともに逓減していったこと③他の再生可能エネルギーと組み合わせることで普及の効果は増加すること④しかしその主体が地方自治体である必要はないこと、である。 これらのことから現時点での結論としては以下のことが示される。①新技術の普及においては、その特徴や社会的意義の周知が有効な手段となりうる。本研究で対象とした初期の太陽光発電については、家計の収支としては必ずしも正になるものではない。しかし、市町村が補助金を設定し、また風力発電などの他の再生可能エネルギーと組み合わせることで「再生可能エネルギー」というものの社会的意義などが情報として与えられ、普及を促進したと考えられる。このことはその効果が時間を通じて減少している、つまり情報が十分に与えられた後では追加的な効果を失うことからも示されている②情報発信主体は必ずしも政府である必要はない。したがって、政策資源の限られる地方自治体においては外部の企業等との連携を行うことで資源を節約しながら効果を確保することができる。
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