研究実績の概要 |
企業間の競争がイノベーションに対してどのように影響するかについて、1999年から2006年までの産業レベルのパネルデータを用いて実証的に研究を行ってきた。特に、産業レベルでの競争の指標と国際競争力の指標を用いて、国内産業で競争することが国際競争力に寄与するかについて明らかにしてきた。これまでの研究では、国内で競争が活発である産業ほど他の産業よりも国際競争力が高いことが示されてきた。しかし、説明される国際競争力は世界輸出シェアなどの他国との相対的な指標が用いられている一方で、競争指標は日本における絶対的な競争指標が用いられてきており、国際的な競争の強さを表すには良い指標とは言えない。
そこで、本研究では、世界の競争を多くの産業でリードしているアメリカの産業との比較において、日本の産業が競争的であるかどうかを測ることにした。具体的には、日本の産業におけるプライスコストマージン率をアメリカのそれと比較し、相対的なプライスコストマージン率を計測し、日本国内の競争度の指標とした。ここでは、相対的なプライスコストマージン率が高い(低い)ほど競争が活発ではない(活発である)ことを意味する。国際競争力の指標については、OECD加盟国内での日本の各産業の輸出および生産シェアを用いた。
本研究の結果によれば、この競争指標が世界輸出シェアおよび世界生産シェアに対して負の効果を持ち、競争が活発になるほど世界シェアが高まることが示唆される。この研究の成果は、Springer社から2017年6月頃に公刊予定の書籍"Competition, Innovation, and Growth in Japan"に収録された。
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