研究課題/領域番号 |
26780163
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
岡田 啓介 関西大学, 経済学部, 助教 (70633064)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 民主主義 / 民主化 / 経済発展 / 制度 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究計画に基づき、以下の点について研究活動を行った。 (1)民族構成、政治体制、及び公共財供給の関係について考察した論文を執筆した。市民候補者モデルに基づき、政策の選好に異質性のある個人を仮定し、民主制・独裁制の下で、民族的多様性が政治家・政策の選択にどのような影響を及ぼすのかを検証した。理論分析では、(a)支配的な民族がいない場合の民主制と独裁制の下で、民族的多様性と公共財の質の間に負の関係があること、(b)支配的な民族がいる場合の民主制の下で、この関係が非単調であること、を導いた。実証分析では、154カ国のデータを用いて、公共財の質として健康の指標を使用し、理論分析の結果が成立することを明らかにした。研究成果は国際的学術誌Research in Economicsに近刊予定である。 (2)所有権を保護する制度がいかなる条件下で出現するのかについて考察した論文を執筆した。土地所有者と農民の間のゲーム理論的状況を考慮し、制度が内生的に決定されるモデルを提案した。分析から、生産性の高い経済では、所有権を保護する制度が内生的に出現し、それにより土地所有者と農民の間の非効率な土地配分が是正されるような協力関係が促進されることが明らかとなった。一方で、生産性の低い経済では、このような制度、協力関係は発生しない。生産性が中程度の場合、複数均衡が生じ、高い均衡では制度が出現するが、低い均衡では出現しない。また、制度の確立により、不平等が低下することも明らかにした。研究成果は国際的学術誌Pacific Economic Reviewに近刊予定である。 (3)次年度に取り組む予定であった、民主化と政府支出に関する研究について、データが計画より早く収集できたため、実証分析に必要なデータセットを作成し、予備的考察を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
次年度に取り組む予定であった、民主化と政府支出に関する研究について、データが計画より早く収集できた。そのため、予備的考察を進められており、次年度には論文を完成させて、国際的学術誌に投稿したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、独裁的な政治体制から民主的な政治体制へと民主化した場合に、政府が行動をどのように変化させるのかについて研究を進める予定である。現時点で、実証分析に必要なデータセットは作成できており、予備的考察を行っている。今後、更に考察を進め、論文を完成させた後、国際的学術誌に投稿したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね計画通りに執行したが、購入したデータが予定より安価であったため、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
比較的、高額の支出としては、統計ソフトStataの購入を予定している。この統計ソフトは経済学の実証研究において広範に使用されているものであり、研究に必要不可欠である。また、研究打ち合わせ・研究成果報告のための旅費、書籍の購入予算などを計上している。
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