研究課題/領域番号 |
26780164
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研究機関 | 松山大学 |
研究代表者 |
溝渕 健一 松山大学, 経済学部, 准教授 (90510066)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 家計 / 省エネルギー / エアコン / リバウンド効果 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、家電エコポイント制度の対象製品のような、エネルギー効率の高い製品に買い替えた場合のエネルギー削減効果について、需要サイドからの評価を試みる取組みである。特に家庭内で夏場や冬場に使用頻度が高く、電気使用量に占める割合も高い、エアコンに注目し、その買替効果を、実際の電気使用量データと質問表調査により検証を行うものである。 本年度は、4月にWebアンケート調査会社に依頼し、関西電力管内の539世帯から、過去25か月分の電気使用量データの提出と、質問表調査の回答を得た。さらに、前年度の調査世帯を加えて、約800世帯のデータを利用して、省エネエアコン買替へによるリバウンド効果の推定を行った。その結果、季節ごとに異なるリバウンド効果の結果が得られた。特に夏場や冬場にはリバウンド効果はプラスとなり、それ以外の季節では、マイナスのリバウンド効果が推定された。 本年度は、前年度の結果を6月にスイスのチューリッヒ大学で開催されるEAERE2016で報告予定であり、さらに、学会後に修正を加えて、英文ジャーナルに投稿する予定である。また、本年度は、より正確なエアコンのリバウンド効果を推定するため、家電ごとのエネルギー使用量を管理できる、Home Energy Management System (以下、HEMS)を導入している世帯を対象に、調査を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、4月に26年度と同様に、省エネエアコンの節電効果を検証するため、関西電力管内の家計に、過去25か月分の電気使用量を提出してもらい、さらに質問表調査にも回答してもらった。前年度調査のデータとあわせて、約800世帯分のデータを揃え、このうち、2年以内に省エネエアコンを買替えた世帯と、未購入世帯のデータを利用して、買替による節電効果と、リバウンド効果の推定を行った。 買替による節電効果については、省エネエアコンに買い替える世帯と、買い替えない世帯には、そもそも社会経済属性が異なると予想される。実際に、質問表調査結果から、2つの世帯の基本統計量に差が生じていた。そこで傾向スコアマッチングの手法を用いて、未買替世帯から、買替世帯と同様の世帯と抽出して分析に用いた。さらに、観測不可能な要因を除去するため、Difference-in-difference法を用いた。結果として、節電効果は主に夏場に観測された。さらに、買替前のエアコンの使用年数から、技術的な削減予想量を算出し、買替によるリバウンド効果の推定も行った。結果として、夏場や冬場にはリバウンド効果は発生していることが明らかになった。一方で、それ以外の月では、マイナスのリバウンド効果が観察された。また、この結果を9月に京都大学で開催された環境経済・政策学会で報告を行い、多くのコメントを頂いた。現在はコメントに基づいて論文を修正し、平成28年6月の国際学会での報告と、英文ジャーナルへの投稿準備を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、次の2点を行う。1つ目は前年度まで実施していた省エネエアコン買い替えによるリバウンド効果推定の論文について、6月にスイスで開催されるEAERE2016で報告し、その後、修正を行い、8月までに英文ジャーナルに投稿する。2点目は、HEMSを導入した世帯を対象に、エアコン以外の省エネ家電による節電効果と、可能であればリバウンド効果の推定を実施する。 具体的には、HEMSを導入した世帯をパネルに持っている調査会社に依頼し、質問票調査と家電ごとの電気使用量データを購入し、計量経済学の手法を用いて節電効果とリバウンド効果の推定を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた消耗品の入荷が予算執行の期限に間に合わず、次年度に持ち越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度からの持ち越し分にはついては、消耗品として、平成28年度4月に執行予定である。また、28年度分の助成金については、9月~10月に調査会社を利用した質問票調査を実施するため、9割近くの助成金をその調査に用いる計画である。それ以外は、調査に必要な消耗品、研究打ち合わせ、資料収集などのための旅費に用いる計画である。
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