本研究では、研究開発活動の代理指標として特許データを利用し、欧米や中国、韓国、台湾(以降、中韓台と記す)と比較して日本企業の研究開発が世界的に高い水準にあるか否かを、技術的に詳細なデータベースである特許データを用いて定量的に確認する。また、各国の特許データを活用し、研究開発の成果と企業パフォーマンスの関係を経済学的に分析する。 最終年度である平成27年度においては、平成26年度に構築した特許データを最新バージョンに更新しつつ、日米欧中韓台の特許出願件数の推移を確認し、構築した統計分析モデルを用いて実証分析を行った。特許を確認すると、2010年以降は中国特許庁への特許出願件数が増加しており、2012年以降はアメリカ特許庁を抜いて世界で最も多く出願がなされている。日本はアメリカに次ぎ世界で3番目であった。また、生産関数アプローチを用いて、特許出願件数が売上高に与える影響を統計分析した。その結果、日本特許庁に出願する特許が増加すると、売上高も増加することが示唆された。また、日本企業が米欧中韓台の特許庁への出願を増加させると、日本での売上げが増加する傾向も観察された。 研究機関全体を通じて、日本における研究開発の成果は依然として世界的に見て高い水準にあることが示唆された。また、日本企業においては、研究開発の成果が生産性を高めており、海外における研究開発の成果の保護も国内の生産性向上に寄与している可能性が統計的に示された。本研究によって、日本における研究開発活動を定量的に捉えることができ、研究開発の成果と企業パフォーマンスとの関係も定量的に捉えることができたことから、成長戦略等の産業政策に関する基礎的資料に資する成果が得られた。
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