28年度は、第2テーマのアンケートの追跡調査を行った。まず、第1テーマの実験から導出された孤立への選好および第2テーマのアンケート結果を基に、ベーシックインカム、セービング・ゲートウェイ、これらのポリシーミックスを基盤とした理論的な制度設計を行った。次に、期待度の高い社会保障制度についてマルチエージェントシミュレーションとアンケートを行った。実験では、制度の細部を詰めるのではなく、現行の社会保障制度とアセットベース福祉型の社会保障制度の違いとして、一時的金銭保証と長期的な貯蓄もしくは政府給付に基づく金銭保証のどちらが実験室の中での疑似的孤立に影響を与えるのかを分析した。 実験デザインは27年度の労働実験の環境を拡張し、失業や離職に伴う孤立を想定し、一度集団から外れ、再び集団に所属する際には求職活動や職業訓練などの社会復帰費用を必要とする環境を設定した。エージェントは集団に復帰する際の費用を自身の貯蓄および政府からの給付金からいくら支払うかをあらかじめパラメータとして保有する。払った額に従って社会復帰の確率が高まる。具体的には、失業時に備え、各回の報酬および政府給付額から貯蓄を行えるようにした。そして、失業時には貯蓄額を費やして、職業訓練を受けることで、失業から復帰して、実験を続けられるようにした。そして、その「貯蓄率」、「貯蓄を崩せる時期」、「給付額」、「給付の時期」を各制度内で様々に操作する。例えば、ベーシックインカムならば貯蓄は任意で、給付は毎回一定額。セービング・ゲートならば貯蓄は毎回一定額を強制で、給付金は無し等のように様々な組み合わせを実験した。
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