研究課題/領域番号 |
26780178
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
浅古 泰史 早稲田大学, 政治経済学術院, 講師 (70634757)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 公約 / 選挙 / 応用ゲーム理論 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、選挙において公約の選挙および政策に対する影響を理論的に分析するモデルを構築することにある。選挙を描いた既存の政治的競争モデルでは、公約は必ず実行される、あるいは公約には意味がなく、政治家には無視されると仮定されてきた。一方で、本研究では、公約を破る費用を導入し、公約と政策の戦略的決定を明確に分けたモデルを提示する。 具体的には、政治的競争モデルを拡張し、①公約を破る費用を導入する、②公約と政策の意思決定を分けて考える、という2点である。この新たな2点によって、選挙において単に勝利したいだけではなく、選挙後のことも考え慎重に公約を選択する政党のインセンティブを描くことができる。これにより、既存の研究では分析が困難であった、以下の点を示すことができた。第1に、異なる特性を有する政党・候補者が異なる選挙の勝利確率をもつことを、均衡として示すことができた。第2に、一部の選挙では、極端な政策を好むと考えられている政党が勝利することがある。このように、極端な政策を好む政党が、投票者に対し大きく妥協したうえで選挙に勝利する理由を示すことができた。 長い間、日本をはじめ多くの国で公約のあり方が議論されている。また、政治家が公約を破ることも問題視されてきた。公約が選挙において重要な役割を果たしているにもかかわらず、公約を分析する理論的枠組みは大きく欠如している。本研究は、公約を分析する理論を提示することで、現実の公約に関する議論にも寄与するものだと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要において示した第1の点(非対称な選挙結果を示すことができる)に関しては、"Partially Binding Platforms: Campaign Promises vis-a-vis Cost of Betrayal"という論文としてまとめ、Japanese Economic Reviewに採択され掲載予定である。また、第2の点(極端な政策選好を有する政党が選挙に勝つ)に関しては、"Campaign Promises as an Imperfect Signal: How does an Extreme Candidate Win against a Moderate Candidate?"という論文としてまとめ、Journal of Theoretical Politicsに採択され掲載予定となっている。(両論文に関して発行は2015年度以降となるため、実績には示していない。) 特に後者の研究は、平成26年度中に学術誌に採択される可能性は低いと考えていたが、分析が順調に進むことにより、採択されることができた。よって、当初の計画以上に進捗していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
交付申請書には、第3の研究として、政党・候補者が選挙時に曖昧な公約を示す理由を考察する点をあげていた。現実の選挙では、多くの政党が曖昧な公約を公表しているにもかかわらず、曖昧な公約を均衡解として示すことは、理論的に多くの困難が伴う。以降の研究は、自身にとって最も望ましい政策に関する不確実性を政党がもっていると考えることにより、曖昧な公約が均衡解となることを示していきたい。つまり、不確実な将来の状況をふまえて、慎重に公約を選択するインセンティブが生じ、その結果、曖昧とならざるをえない状況を示すことを目的とする。 また、応用研究を進めることを考えている。例えば、メディアの政治からの自由度の違いは、公約を破る費用の違いを意味する。よって、メディアの自由度の違いの、選挙や政策に対する影響を分析していくことが考えられる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究の進展度の箇所に示したように、2014年度に研究を当初予定より早く進めることができたため、今年度後半に予定していた研究発表などを行わなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
遂行中の研究、および新たにはじめる公約に関する研究に振り分ける。
|