研究課題/領域番号 |
26780183
|
研究機関 | 兵庫医療大学 |
研究代表者 |
西田 喜平次 兵庫医療大学, 共通教育センター, 講師 (50631652)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 適切な医療圏域の設定 / 空間的競争モデル / DPC/PDPS / 出来高払い制 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本国が診療支払い制度として採用している出来高払制度とDPC/PDPS制度(診断群分類に基づいて評価される入院1日あたりの定額支払い制度)間で、患者の通院距離や医療提供施設の空間的密度が、医療施設間競争にどういった影響を与えるか、分析を行うことを目的としている。これまで、ホテリングの空間的競争モデルを用いて、患者の通院行動と医師の診療行動を考慮した上で、二つの医療提供体制をモデル化し、具体的なシナリオを与えて比較分析を行っている。出来高払い制度の下では、医師が患者の通院回数をコントロールすることが出来るシュタッケルベルグの場合と、コントロール出来ないナッシュの場合の二種類の競争が想定できるのに対して、DPC/PDPSの下では、これら二つの競争に区別がない。このため、出来高払い制下のシュタッケルベルグの場合、出来高払い制下のナッシュ、DPC/PDPSの三種類の競争を比較分析することになる。モデル分析の結果、利潤の観点からDPC/PDPSの下で最も激しい競争が行われることが知見として得られた。その他、医療費の観点からDPC/PDPSが出来高払い制度より優位になるための平均的な診療報酬と一日あたり定額費用の関係式や、複数の医療施設が立地した場合の適切な医療圏サイズに関する性質、医療過疎地に新規診療所を誘致するための条件式、も得られた知見として挙げられる。今後は得られた知見を実証することが課題である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は経済理論モデルを用いて仮説を構築した後、データを用いた実証を行う予定である。現状では、ホテリングの空間的競争モデルを用いて、日本で採用されている二つの医療提供制度である、出来高払い制度とDPC/PDPS制度の制度間比較を行い、導いた知見を海外査読雑誌に投稿中である。しかしながら、得られた知見を導く前提となる仮説が、日本の医療提供体制に馴染みの薄い海外査読者に受け入れられ難く、これを正当化するための実証結果を模索している途中であるため、研究進捗が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
ここまで行ってきた経済理論モデルの分析を引き続き行う。モデル分析に続く実証分析に関しては、データ分析に必要な研究補助員を新たに確保し、研究代表者の時間的負担の軽減を図り、スピードアップ化を図る。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実証研究を行うために計上していた予算(物品費やデータ整理のための人件費)が、進捗の遅れにより消化できなかったため、未使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
実証分析を行うためのデータ整理人員を確保し、人件費に充てる予定である。
|