研究実績の概要 |
我が国では, 診療所や病院など医療施設の空間的偏在は顕著である。本研究では、第一段階で立地, 第二段階で通院一回あたりの医療サービス量(診療密度)を戦略としたホテリング流の空間的競争を複数の医療施設が行っていると仮定した場合に, 出来高払い制度(FFSRS)と診断群分類別包括支払い制度(DPC/PDPS)のどちらの医療提供体制が, 競争メカニズムを通して医療施設の空間的偏在を緩和させることが出来るか, 研究を行った。FFSRSに関しては, 医療施設が先に提示した診療密度に対して, 患者が通院回数を決定するシュタッケルベルグのケースと, 診療密度と通院回数が同時に決定されるナッシュのケースの二通りを想定したのに対し, DPC/PDPSに関しては, シュタッケルベルグとナッシュの違いは見られなかった。分析結果として, 空間市場内に多数の医療施設が線形市場に等間隔で参入したと仮定した場合, 市場全体で達成される総医療費の差は見られないが, DPC/PDPSはFFSRSよりも低い利潤をもたらし, より激しい競争を発生させることが解明された。また複占的医療施設が同時に市場参入した場合の均衡立地点を考えた場合, シュタッケルベルグとナッシュの場合ともに, 空間的集中立地をもたらす場合が観察されたのに対し, DPC/PDPSは観察されなかった。この結果から, DPC/PDPSはFSSRSと比較して, 医療施設の空間的集中を緩和するメカニズムが内在されている証拠を見出すことが出来た。
|