研究課題/領域番号 |
26780187
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
木成 勇介 九州大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (10509855)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / 期待形成 / 経済実験 / アンケート調査 / リスク態度 |
研究実績の概要 |
本研究課題の最大の目的は、人々が形成する期待の特徴を明らかにすることにある。この目標を達成するにあたり、実験の被験者・アンケートの回答者が自身の期待を正確に回答していることが前提となる。しかしながら近年、その妥当性が議論の的となっている。即ち、人々の期待は確率的割引ファクターを含んだ期待になっている、つまり、期待に回答者のリスク態度が含まれているため、純粋な期待データとして扱うことはできないという批判である。 本研究課題が期待データを扱う以上、その妥当性に疑問が投げかけられている状態で当初予定通りの研究を進めるのはリスクが高いと判断し、今年度は当初予定を変更し、まず、その妥当性を確かめるべく、1)リスクと期待に関する実験を設計・実施した。実験は2014年11月から2月にかけてストーニーブルック大学にて実施した。現在、実験結果を分析中である。加えて、2)リスク態度・期待及び嫉妬に関する実験を実施した。これはヒトが嫉妬感情を抱く際に、リスク態度や期待が変わり、その後の行動が変化するかどうかに関する実験である。実験は2014年7月及び2015年1月に近畿大学にて実施した。現在、実験結果を分析中である。また、3)選挙時における期待と幸福度の関係(現在、Electoral studiesに投稿中)、4)自身の能力に関する期待と兄弟姉妹構成(掲載受理済)、5)贈与行動に対する期待と自身の行動(現在論文執筆中)について分析を行った。これらはいずれも、期待に深く関わるものであり、本研究課題であるヒトの期待形成解明に向けて一定の貢献が期待されるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請課題の最大の目的は、人々が形成する期待の特徴を明らかにすることにある。この目標を達成するにあたり、実験の被験者・アンケートの回答者が自身の期待を正確に回答していることが前提となる。しかしながら近年、その妥当性が議論の的となっていることがわかった。本申請課題が期待データを扱う以上、その妥当性に疑問が投げかけられている状態で当初予定通りの研究を進めるのは問題があると判断し、当初予定の研究の遂行は一旦休止状態とし、今年度はまず、その妥当性を確かめるべく、リスクと期待に関する実験を設計・実施した。(但し、休止としたのは論文執筆及び新たなデータ収集であり、これまでに自身が収集した期待データに関しては分析を行った。)また、アンケートや実験における期待の回答がリスク態度を含むか否かに決定的な影響を受けないと思われる研究については同時進行で行った。当初予定とは異なるものの、複数の実験を設計・実施し、複数の論文を執筆し、うち1本が掲載受理、1本がしかるべき学術誌に投稿中である。 当初予定とは異なるものの、期待研究自体は進展させることができ、様々な研究成果を生み出すことができた。これらは全て本研究課題の目標である人々の期待形成解明に資するものであるため、本研究課題はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
まず、前述の1)リスクと期待に関する実験、及び2)嫉妬とリスク態度・期待に関する実験の実験結果を分析し、論文にまとめ、しかるべき国際学術誌へ投稿し、掲載を目指す。特に、1)の分析において、回答者の期待データは純粋な期待データとして利用可能であることを明らかにできれば、当初予定通り、期待とバイアスの関係について再度分析を試みる。具体的には、楽観性・悲観性や自信過剰などの期待バイアスと調査時点の価格・予測スパンとの関係、ニュースが期待バイアスに与える影響、期待バイアスが時間とともにどのように変化するか及び期待が時間とともにどのように改訂されるかについて、自身が収集したデータ及び他機関のアンケート調査を用いて分析を試みる。対して、回答者の期待データとリスク態度は不可分であることが判明すれば、リスク態度との相関も考慮に入れた上で分析可能な方法を検討する。必要であれば追加の実験を設計・実施する。また、時間が許せば、最新の研究をフォローし、期待形成解明に資すると考えられる新たな実験を設計・実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初目標を達成するにあたり、当初の計画には無かった研究を先に行う必要が生じ、またそのために当初計画にあった論文の英文校正や投稿を先延ばしにしたため次年度使用額が生じた。具体的には、当初計画に記載した、これまでに蓄積した期待に関するデータを分析し、論文にまとめることを一時保留し、アンケートや実験で得られた期待データが純粋な期待を表しているか否かを確認する実験を新たに設計・実施した。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度先送りした論文執筆にあたり、英文校正・国際学術誌投稿費が必要となる。今年度は複数の論文を執筆する予定であること、また近年為替レートの変動が激しいため費用の見積もりが難しいことから、既に今年度支出計画に計上してはいるが、それに追加して使用する予定である。
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