研究課題/領域番号 |
26780188
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
長田 健 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (30612204)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プルーデンス政策 / 銀行行動 / 自己資本比率規制 / 資本注入政策 / Level Playing Field / 学閥 |
研究実績の概要 |
本研究は「A:銀行の自己資本(資本構成)に関する先行研究のサーベイ」「B:資本注入政策が銀行の効率性・健全性に与えた影響を分析する実証研究」「C:Level Playing Fieldと銀行の効率性・健全性の関係について分析する実証研究」それぞれに関する論文の完成を目標としている。 平成28年度の研究実績は3点ある。1点目は拙稿〝Banks restructuring sonata: How capital injection triggered labor force rejuvenation in Japanese banks"(共著)の海外学術誌(The B.E. Journal of Economic Analysis & Policy)への掲載決定である。昨年度(27年度)末に投稿、今年度は一連の修正・再投稿のプロセスを経て、年度末に掲載が決まった。本研究は上記「B」に該当する。邦銀に対する資本注入正政策が、硬直的な雇用慣行に働きかけ、従業員の若返り(効率化)を促進したことを実証的に示した。 2点目は、海外学会における論文報告である。「B」に該当する本研究は、邦銀の取締役会に存在する学閥等の個人的ネットワークと資本注入政策、銀行のパフォーマンスの関係について分析を行った。学会報告時に受けたコメントに基づき、修正・改訂を行った(進行中)。本研究に関しては、年度末に共同研究者2名とオーストラリア国立大学で会し、集中的に共同研究を実施した。 3点目は、拙稿『貨幣間競争下の銀行規制のあり方』の公刊である。Fintechの普及に伴う貨幣間競争の激化とその中での銀行規制のあり方について論じた。Level Playing Fieldの観点から規制の整備を進める必要性を論じており、上記「C」に該当する。 「A」に関しては、論文刊行には至っていないが、1年間を通じてサーベイを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」にも記したように、本研究課題では3つの異なるテーマの論文の刊行を目標としている。 1点目の資本注入政策の効果に関する研究においては、1つの論文が海外学術誌にレフェリープロセスを経て年度内に掲載が決定し、予定通りに研究成果を得られた。本研究から派生した新しい論文が公刊に向けて進行中であることは当初の計画以上であると言える。 2点目のLevel Playing Fieldに関する研究に関しては、1つの論文が公刊に至ったが、学術誌掲載ではない。また、当初予定した国際比較をした実証研究ではなく、サーベイに基づいて考察した論文となった。以上2点より、本研究に関しては、やや遅れた進捗状況と評価する。 3点目の銀行の資本構成に関するサーベイ論文に関しては、サーベイは進めているものの、論文の形にはなっていない為、進捗状況は遅れていると評価する。 以上より、全体として進捗状況は「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
上記研究の遅延に伴い、補助事業期間を1年延長頂いた。この延長期間を有効活用し、遅れを取り戻し1つでも多くの研究成果を得られるよう努めたい。 具体的には、まず手付かずの「銀行の資本構成に関するサーベイ論文」の執筆に取かかり、年度内に投稿・公刊を目指す。 国際比較を目的に昨年度購入したデータベースを活用し、Level Playing Fieldに関する実証研究を実施する。 以上2つの具体的な目標を完遂できるよう、研究を推進したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
遅延に伴い、補助事業期間を1年延長頂いた為。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年6月に米国にて開催される国際学会における報告のための渡航費に使用する予定である。
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