研究課題/領域番号 |
26780189
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
鈴木 史馬 明星大学, 経済学部, 准教授 (60583325)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | レバレッジ投資 / 不完備市場 / 金融危機 |
研究実績の概要 |
「不完備市場経済における金融機関のポートフォリオ選択と非伝統的金融政策」をテーマとする本研究プロジェクトは以下2つの点を明らかにすることを目的としている。(1)何故、金融機関は結果的に保有資産の投げ売りをしなければいけなくなるほどの過剰なレバレッジ投資を行うのか?(2)政府・中央銀行の資産市場への介入は金融機関や保有資産の構成が異なる家計間にどのような効果をもたらすか? 上記のテーマを考えるため、平成26年度中には主に理論的分析を中心に研究を進めてきた。そして、基本的なモデルを構築し、均衡において金融機関が結果的に保有資産の投げ売りをしなければ行けなくなるほどの過剰なレバレッジ投資を行う状況を分析する準備が整った。今後は、このモデルの数学的特徴付けをいっそう深めていく予定である。 また、分析を行う中で興味深い理論的含意を発見した。それは、Saito and Suzuki (2014)やSuzuki (2014)などの大災害リスクを外生的現象とする文脈では、選好パラメータや大災害時の一人当たり実質GDP、消費の特性によっては、大災害発生時に危険資産価格が下落するのではなく上昇することがあり得る。これは危険資産リスクプレミアムの縮小要因となりうる。しかし、本研究で構築したモデルでは、均衡において金融機関の投げ売りにより危険資産価格下落が生じるが、これは必ずしも危険資産リスクプレミアムの拡大要因とはならない。これは、金融危機時に見られる危険資産価格の暴落はそれ自体危険資産リスクプレミアムの拡大要因とはならない可能性を示唆している。この結果は、まだ予備的な段階にすぎないが、本研究課題が危険資産プレミアムパズルなど、マクロ経済学におけるより一般的な研究課題とも関連している可能性を示唆している。 次年度以降、理論モデルを完成させ、さらに政策分析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目を終えた段階で、交付申請書に記載した「研究の目的」を達成すべく研究を推敲している。やや細かな点だが、理論モデルについて、いくつか設定を変えたとしても同じ結果が出ることを確認するなどしている。これらの点から、概ね当初の計画通り順調人進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、理論モデルの数学的分析を精緻に行っていく。その上で、資産価格に関する研究と政策分析に関する研究の両方の観点から論文をまとめていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度はコンピューター等の購入を行う必要がなかった。また、研究の進捗状況から見て、国際学会への出張などもなかった。以上から、当該年度内で助成金を使い切るのではなく、次年度以降に使用することが研究推敲上有用だと考えた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には、国際学会への出張または海外の研究者との打ち合わせのための出張旅費や、研究課題遂行のための専門的知識の提供を期待できる研究者を招聘するための謝金などとして利用する予定である。
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