本研究の目的はタイミングリスク,つまりある配当が支払われる時間が不確実であることによるリスクを,拡散過程によって与えられるモデルのもとで漸近的な静的ヘッジ公式とそのヘッジエラーの評価を行うことである.タイミングリスクのヘッジにおける先行研究においては,1次元ブラックショールズモデルのもとで与えられていたが,本研究では一般の拡散過程,特に確率ボラティリティーモデルまで扱う.モデルの一般化によりリスクのヘッジに対してエラーが生じる.赤堀次郎氏,Flavia Barsotti氏とともにPut-Call対称化手法を用いることによって漸近的な静的ヘッジが与えられることを提案した.この漸近的な結果はバリアー境界における係数の不連続度によっている.この不連続度が十分に小さいとき,ヘッジの誤差が漸近的に小さくなるという結果について現在論文を投稿中である. 今回得られた漸近的な静的ヘッジは偏微分方程式のガウスカーネルにおけるパラメトリックス法が本質的な役割となっている.本年度は近年,価格過程として主流となっている確率ボラティリティーモデルのひとつであるSABRモデルについて,係数がある条件のもとで双曲ブラウン運動のカーネルによるパラメトリックス法が得られることを示し,論文へ掲載した. この結果から,双曲空間上の距離を用いることによりこれまで考えていた超平面のバリアーでは表せないものまで考えることができるようになり,SABRモデルにおけるタイミングリスク扱うことができるようになった.
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