研究課題/領域番号 |
26780195
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
三浦 壮 鹿児島大学, 法文学域法文学系, 准教授 (60432952)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高良宗七 / 窒素工業 / 社会的基盤 / 資本制社会 / 産業革命 / 地域工業化 / 地方資産家 / 資本市場 |
研究実績の概要 |
今年度は,前年度の調査・入力した高良家文書を分析し,地方株を大量に保有した高良家の投資動機や投資に関わる社会的背景を論文にした.当該論文は『社会経済史学』81巻3号に論説として掲載され,地方資産家・地方株式市場に関わる被引用文献としての実績も本年度に残した. これまでの研究では,宇部の資産家たちの投資動機を社会的側面から分析してきたが,当該論文ではその研究成果を前提としながら,地方の株式市場を利用しながら資産の蓄積を行ってきた側面を強調し,経済的動機に焦点を当て分析することにした.また投資企業の経営数値を分析することで,地方資産家のネットワークによる積極的な株式払込がなされたことで競争力が増し,高収益をあげることに成功し,結果として資産家の資産蓄積にも寄与していたことを示した. 資料のデータ整理に関しては,地方株式市場を利用して経営を行った諸企業に関するデータ入力をアルバイトを雇用し行った.これらのデータはまだ未完成であるが,量が多いだけに収穫があったと評価したい.最終年度でも引き続きデータ入力を行う予定である. また,本年度は思いもよらぬ史料上の収穫もあった.本研究課題の対象地域で操業を行った宇部窒素の技術者に関わる一次資料が東京の古本屋で出品された.早速購入し,鹿児島大学図書館に寄贈,申請者の研究室配架扱いとなった.科研費の最終年度は,宇部窒素の分析を行う予定であるが,それに寄与すること大であった. また宇部地域で稼行した沖見初炭鉱に関する資料を東京経済大学で複写することに成功した.同炭鉱は宇部地域では数少ない地方株式市場を利用しなかった炭鉱であり,経営は失敗した.比較対象として重要な意義を持つ可能性がある.引き続き資料を分析中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題が採択されたのち,予想を上回る新資料を発掘できた.その結果,学会誌への掲載論文も本年度は残すことに成功した. ただし,資料の量が多いため思いのほか資料の複写,データの入力と整理に時間がかかり,まだまだ地方株式市場の機能を明らかにできる余地が残っている. 最終年度はこれらの課題に決着がつけられるよう,集中して分析を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は①資料の整理・データ入力,②入力データの分析,の2点にわかれる.新聞資料は時々取りこぼしがあるので複写する必要があるが,一次資料はほとんど複写できているので,これらの電子データ化を急ぎたい. 宇部鉄工所,沖見初炭鉱についてはデータ入力はほぼ完成しているので,年度末には論文が刊行できるよう努力したいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
予想外の購入資料が今年度あったため,予算が足らなくなったため.
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次年度使用額の使用計画 |
アルバイトの量を減らし,計画を執行する予定である.
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