研究課題/領域番号 |
26780199
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
前田 廉孝 西南学院大学, 経済学部, 講師 (90708398)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 日本経済史 / 塩専売制度 / 大日本塩業協会 / 大蔵省 / 農商務省 / 塩専売法廃止法案 |
研究実績の概要 |
平成26年度における研究実績の大要は,以下2点を挙げることができる。 第1は,日清戦後経営期における内地製塩業の同業者団体であった大日本塩業協会による活動を分析し,1890年代後半から1900年代前半までにおける食塩輸移入量増加へ対する製塩家らの状況認識を明らかにしたことである。農商務省は積極的に協会を利用することで業界へ向けた情報の伝達を図った一方で,製塩業界側は好調な経営状態を背景として食塩輸移入量増加へ対する関心が必ずしも高くなく,業界側からの情報発信と業界内における情報交流は盛んにはならなかったのであった。 第2は,1907~08年の帝国議会における塩専売法廃止法案審議過程を検討することにより,1905年の導入直後から塩専売制度が運用方針の頻繁な転換を余儀なくされた要因を明らかにしたことである。導入初期における塩専売制度は,農商務省から転属した技官による協力の下で,簡素な制度として運用することが目指され,食塩の生産と流通へ対する介入は極力避けることとされた。こうした運用方針の下において生じた小売価格の高騰は,制度運用の不備に起因すると世論から判断された。そこで政府は,廃止賛成派の主張へ配慮するために小売価格の低減を図る一方で,歳入源としての役割を維持するために塩専売事業収入の減少を回避しようとした。つまり,導入初期における塩専売制度の二律背反的な運用目標とは,制度存立が危ぶまれるほどに高まった批判の下で,政府が塩専売制度の廃減税に応じることが困難であったが故に歳入源としての役割を維持するために設定されたのであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「交付申請書 平成26年度の研究計画」に示した計画は,いずれも本年度中に完了することができた。さらに,「平成27年度以降の研究計画」に示した計画の一部を前倒しで着手することもできた。したがって,「当初の計画以上に進展している」と判断することができる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度においては,以下2点を中心に研究を進める。 第1に平成26年度に収集した香川県宇多津町内における明治・大正期製塩会社経営史料の分析を実施する。具体的には,坂出市塩業資料館と公益財団法人塩事業センター塩業資料室に所蔵される宇多津塩田株式会社,宇多津製塩株式会社,宇多津東塩田株式会社,宇多津大東塩田株式会社に関する史料を用い,これら製塩会社を対象とした経営史的考察を進める。 第2に全国塩田同盟に関する史料の分析を実施する。具体的には,公益財団法人竜王会館所蔵野崎家文書を用い,塩専売制度下における賠償価格引上運動を中心とした全国塩田同盟の活動実態を考察する。
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