研究課題/領域番号 |
26780199
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
前田 廉孝 西南学院大学, 経済学部, 准教授 (90708398)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 日本経済史 / 塩専売制度 / 製塩業政策 / 農商務省 / 大蔵省 / 関東州 / 台湾総督府 / 日露戦争 |
研究実績の概要 |
平成27年度における研究実績の大要は,以下2点を挙げることができる。 第1は,日清戦後経営期における内地の製塩業政策について,台湾総督府の塩専売政策との関連を視野に収めつつ分析し,両政策間の相互規定的な関係性を明らかにしたことである。台湾における塩専売政策は,台湾総督府財政の改善のみならず本国の財政状況改善に資する効果を有したことから,大蔵省も積極的に後押しした。その一方で,台湾製塩業と内地製塩業は競争関係を有したために,台湾の塩専売政策は内地の製塩業政策を規定する側面を有した。植民地財政が本国財政からの「独立」を達成できていなかったが故に,両地間における政策は相互規定的に展開され,本国政府による政策遂行過程は植民地政府によるそれに規定されざるを得ない側面を有したのであった。 第2は,1900年代後半の清国へ向けた関東州塩輸出協定交渉が決裂した過程とその後の内地における関東州塩輸入拡大の過程を関連付けつつ分析し,日露戦後日本における植民地貿易拡大が財政収入増加を目的とした政府の施策によって促進された側面を有した点を明らかにしたことである。戦前期日本の植民地貿易に焦点を当てた先行研究は,政府が金本位制下における正貨を節約するために植民地貿易の拡大を促進したと論じてきた。それに対して本研究は,20世紀転換期に日本の財政状況は植民地の拡大に伴って悪化した点に着目し,政府が本国と植民地における二重課税によって財政状況を改善するために内地経済と植民地経済の相互依存性を高めたことを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「交付申請書」に示した研究実施計画の通りに,概ね順調に進展している。但し,史料収集の進捗に応じ,「交付申請書」に示した研究実施計画のうち平成28年度実施予定であった研究の一部を本年度に前倒しした一方で,本年度実施予定であった研究の一部を次年度に先送りした。このように部分的な研究計画の変更は生じたが,「交付申請書」中の「平成27年度の研究実施計画」と「平成28年度の研究実施計画」に記載した全ての事項に着手し,進展を見ることができた。したがって,総じて概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度においては,以下2点を中心に研究を進める。 第1に,明治・大正期における製塩業経営の動向について,香川県宇多津町の製塩会社を事例に検討することである。本研究については概ね分析が完了し,既に論文の執筆作業を進めている。また,その過程において平成28年7月及び10月に学外研究会と学会全国大会で報告する目処も立っている。 第2に,塩専売制度導入後に設立された全国塩田同盟の活動について分析することである。本研究についても概ね分析が完了し,平成28年度中には論文を刊行できる見込である。 第3に,塩専売制度の運用過程を検討するために同制度下における食塩流通の実態を分析することである。本研究については史料の収集は概ね完了し,現在は分析に着手している。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末における経理処理の都合で「次年度使用額」が生じたことになっているが,実際には年度末(3月末)に使用を完了している。なお,上記の点については本研究費の管理を担当する本学の教育・研究推進機構と協議済であり,適切に経理処理を実施した。
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次年度使用額の使用計画 |
上記「理由」欄に示したように,実際には本年度の実支出額と交付決定額は合致しているため,次年度の使用計画に特段の変更は生じない。
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