平成27年度になって当初想定していなかった問題に直面したため、予定を多少変更して研究が進められた。サプライチェーンマネジメントに関して協力して研究を行う予定であった米国教員が他大学に移ることとなったため、当初通りの継続が難しくなってしまった。そのため、考察・分析の対象とするビジネスプロセスを顧客関係管理のみに絞り込み、昨年度に引き続き2名の米国研究者との協力のみに切り替えた。 平成27年度には、文献レビュー、リサーチデザイン、および概念モデルの構築と洗練、さらにはその検証に取り組んだ。具体的には、筆者はコールサービスセンターのオフショアリングに関するレビューを担当し、一名の米国研究者はブランドに関するレビューを担当している。また、昨年度に引き続き、もう一名の米国研究者には価値共創およびサービスドミナントロジックの視点から概念モデルを改良することで協力を受けた。 今年度に特に力を入れたのは、コールサービスセンターのオフショアリングにおいて、顧客(問い合わせを行う顧客)と対応者(コールサービスセンターのエージェント)の間で行われる価値共創を捉える鍵概念を探すことであった。今年度の成果としては、顧客と対応者の間で「コールサービスセンターのエージェントに関するプロトタイプ」の構築をめぐって、価値共創の程度が左右されているということが見出されたことにある。 当初予定していた実験室実験を実施するまでの概念モデルの構築にまでは至らなかったが、顧客が形成するプロトタイプの構成要素の分析を行うということが達成された。具体的には、特に日本人顧客がコールサービスセンターエージェントに対してどのようなプロトタイプを形成しているのか(さらにはプロトタイプを構成する諸要素において、日米間で差があるのか)について、複数の日本人顧客に対してインタビューを行い、導出している。
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