平成27年度までにデジタルスチルカメラ産業でビジネスを展開する企業に対して、事業ドメインの再定義、事業システムの再構築に関してインタビュー調査や文献調査を行い、これらに関連する理論的到達点について先行研究の整理を行ってきた。最終年度は、以下の3点を行った。 ひとつは、劇的な環境変化に直面しながらも持続的な事業成長と価値獲得を行ってきた下記企業に対して、日本、欧州、北米、アジアの各地域の市場でどのような事業を展開してきたのかを包括的に把握した。調査対象企業は、カメラを製造・販売する6社(リーディング企業2社、中堅企業2社、ニッチ企業2社)と、レンズを製造・販売する1社、完成品を持たない関連企業3社である。そして、これらの企業がどのように事業システムを構築、革新してきたかについて、これまでの調査研究を補強するインタビュー調査をフォトキナ2016(2016年9月:ドイツ・ケルン)、カメラ技術セミナー(2016年11月:東京都渋谷区)、CP+(2017年3月:神奈川県横浜市)などキーパーソンが集まる機会や、再度の企業訪問などを設定し、行った。 ふたつ目に、デジタルカメラメーカー各社および関連企業各社の事業ドメインの変容について、社内外(従業員、取引先、最終消費者)との間で、コンセンサスがどのように形成されたのかについて、インタビュー調査、文献調査によって分析した。 最後に、上記の把握事項を結合することで各社の事例研究としてまとめた。具体的には、(1)如何に事業ドメインの再定義を行い、(2)そのドメイン修正についてコンセンサスを得るためにどんな取り組みを行い、(3)それが事業システムの革新のエンジンとして如何なる役割を発揮したのかについて、各社の異同について分析している(調査対象企業へのフィードバックとその後のブラッシュアップを行っている段階であり、平成29年度中に刊行予定)。
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