本研究課題では、日本における長時間労働と人事労務管理の関係性について考察を深めた後、人事労務管理の柔軟化と労働時間管理の適正化を考える目的のもと、日豪比較を行った。 2017年度は、オーストラリアにおけるフルタイムで働くホワイトカラー労働者を対象としたWeb調査を実施した。この調査より、自分の裁量で仕事量を決められる場合や職場の労働力が充足されていると感じる場合は労働時間に対する満足度が高いこと、職場での労働力充足感が高いとワークライフバランス(以下WLB)満足度は高いこと、家族・友人との時間満足度が高いとWLB満足度が高まること等、近年日本国内で重要な論点となっているWLBと労働時間、人事労務管理の関係が明らかになった。 日本の長時間労働問題の主たる要因として、業務量の多さや、それに対応する人員の不足が指摘されている。この点に関し、本Web調査からは、オーストラリアでは、仕事が増えると予想されるときに、「所定労働時間を増やす」や「所定外労働時間を増やす」といった対応がとられる一方、新規にフルタイムやパートタイムの労働者を採用するケースが多いことも明らかとされた。日本では、多すぎる業務量には所定外労働時間を長くすることで対応する傾向が見られるが、本Web調査からは、労働時間を増やすことで多すぎる業務量に対応するのではなく、新らに人材を採用することがWLB満足度を高めることにつながることが示唆された。 本研究課題から得られた知見は、本研究課題終了以降も成果報告を行うことが決定している。2017年4月時点で、2018年5月に連合青森主催の地域フォーラム、2018年6月の労働政策研究会議、2018年9月の日本経営学会全国大会における研究報告が確定している。今後も議論を深めながら、本研究課題から得られた知見を国内外に発信していく。
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