平成29年度は、前年までの研究成果であるノートパソコン市場におけるイノベーションの新規採用・代替採用に与えるネットワーク効果の影響に関して、国際会議(IAMOT 2017)で発表した。さらに、国内・海外の研究者との研究打ち合わせなどを通じて、分析結果の検証、普及戦略への示唆をまとめた。 研究期間全体の成果としては、世代間代替を有するイノベーションについて、新世代のイノベーションの普及を「新規採用(旧世代を利用していないユーザーの新規採用)」と「代替採用(旧世代を利用していたユーザーの旧世代から新世代への代替採用)」のスピードを計測可能な普及モデルを開発し、そのモデルを用いて58カ国におけるナローバンド回線とブロードバンド回線の採用スピード、代替スピードの計測し、それらのスピードに国の経済的特性、文化的特性、地理的特性、文化的特性が与える影響の分析を実施した。その結果、国民文化における不確実性回避の強さが採用スピードに負の影響、権力格差の強さが採用スピードに正の影響、集団主義の強さが代替スピードに正の影響、男らしさが代替スピードに負の影響を与えている可能性を示唆した。さらに、イノベーションの採用の前段階である情報普及においても、国民文化の違いが普及スピードに影響を与えることを示した。また、ネットワーク効果により先行者が優位であるはずのパソコン市場において、消費者の選択意思決定行動にはPC市場そのもののネットワーク効果ではなく、スマートフォン市場とタブレット端末市場などの他製品市場の同期とネットワークサービス(他製品市場からのネットワーク効果)がPCの選択に大きく影響を与えていることなどを示した。 これらの研究成果から、イノベーションの普及に関して新たな知見を得ることができた。
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