研究期間を通じ以下の成果をあげた。まず、モバイル・プラットフォームの立ち上げに関して理論的研究が少ない中、日本が世界にさきがけてモバイル・プラットフォームを形成した事例研究を、当時のプラットフォーム立ち上げ当事者からの綿密な聞き取り調査を経て明らかにした。具体的には、NTTドコモ社のi-modeプラットフォーム形成に焦点をあてたが、特に、既存の別プラットフォームで形成されていたインストールド・ベースを、新プラットフォームであったi-modeへ援用したことが、同サービスの成功の要因のひとつとなったことを明らかにした。 また、プラットフォーム・フォロワーとしてのモバイル・アプリケーション企業に焦点を当て事例研究を実施した。研究を通じて、(1) ユーザーが製品を使用する際、快適感や没入感など主観的価値を得る製品をつくり込み、(2) その主観的価値が収益に結びつく事業デザインを設計しながら、(3) 自社のつくり込み能力を完全に活かせるプラットフォームを選択するモバイル・アプリケーション企業が、高い成果をあげることを明らかにした。 さらに、2000年代の携帯電話産業では、フィーチャーフォンからスマートフォンへのプラットフォームの変化が起こったが、その変遷期における端末メーカーの製品開発行動と成果の関係に焦点を当て、実証分析を行った。分析の結果、(1)早期にスマートフォンへ製品ラインを集中させたメーカー、(2)最も遅い時期までフィーチャーフォンへ製品ラインを集中させたメーカー、(3) スマートフォンとフィーチャーフォンに製品ラインを分散させたメーカー、の順にスマートフォン製品の成果(顧客満足度)が高いことを明らかにした。
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