日本におけるオークション市場の既存研究としては,セオドア・ベスタ―による中央卸売市場(築地市場)を対象とした研究(Bestor, 2004)が唯一知られたものである.本研究は,これまで学術的に明らかにされてこなかった古物・骨董品の業者間市場の実態を明らかにしたことにまず一定の貢献がある.また,既存研究では,市場や組織といった統治メカニズムに関して,競争や,信頼,権限関係はそれぞれ排他的なメカニズムとして検討されてきたが,本研究では,市場参加者はそれぞれの要素を適宜柔軟に使い分けることで取引の安定性を実現しようとしていることを発見したことも重要な貢献である.
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