本計画は「困難な状況下で成功した在日コリアン起業家には、他の起業家と異なる特性があったのか」というリサーチ・クエスチョンを探索するものである。このリサーチ・クエスチョンは次の2つの命題に発展する。 P1 GEMによる「移民・外国人起業家がその国、地域の経済をブーストする」という指摘は、日本における最大のエスニックグループ、在日コリアンにおいても当てはまるのか P2 在日韓商の起業成功率が際立って高いのは、どのような変数(起業家特性、環境、組織)がどう作用したのか このリサーチクエスチョンを探索し、2つの命題に答えるため、前年度までの実績を基に半構造化インタビューを実施した。その音声データをGrounded Theory Approach によって分析し、複数の研究者の協力も得ながら解釈した。特にEO(Entrepreneurial Orientation)モデルとの照合から議論を発展させた。 その結果として、「困難な状況下で成功した在日コリアン起業家には、他の起業家と異なる特性があったのか」についてはあったとなった。更に具体的には、自律性向、革新性向、リスク選択性向、先進性向が特に強く、逆に競争上の攻撃性向はほとんど見られなかった。これは在日コリアンが日本におけるマイノリティであるがために、日本社会でビジネスを行うためには周囲とコンフリクトを起すのではなく、調和し、社会に貢献する存在であることが重要になるためであろうと考察した。こうした成果は学会、国際会議、有力ジャーナルへの発表を予定している。また今後の研究としては更に移民起業家という視点から在日外国人、在外日本人の起業プロセスと成功要因を探る研究を進める。
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