研究実績の概要 |
2014年度の研究では,当初設定した研究目的2つのうち,第1の「自動車産業における次世代自動車(ハイブリッド車,電気自動車,燃料電池車普及に向けた開発・生産のプロセス革新,具体的にはオープン・イノベーションの活用の実態を明らかにすること」に対して大きな進展があった。具体的には,次世代自動車のうち今後の進展が期待される電気自動車に焦点をあて,主要な完成車メーカーの技術・製品戦略及び基幹部品調達戦略の国際比較を行い,オープン・イノベーションの適用にはどのような差異が認められるかという点を解明した。主要な点は,アメリカ企業のテスラは最もオープン度の高い戦略を選択し,日本企業の日産自動車や三菱自動車工業は従来の自動車に近いクローズド型の戦略を選択しているということ,しかしながら両者は完全な対極に位置取りしているのではなく,事業環境の変化に伴いその中間形態への収斂とも取れる動態的側面を見せていることである。 また,当該産業におけるオープン・イノベーションを進める上で重要な拠点になりうる台湾企業の実態については,台湾の工業技術研究院(ITRI)日本事務所を訪問することで情報収集に努めた。アメリカのテスラは基幹部品の多くを自動車産業との取引関係が皆無(あるいは非常に少ない)の台湾エレクトロニクス系部品企業から調達しているが,それを可能にしてきた背景には,ITRIのような公的研究機関並びに台湾自動車産業からのエンジニアの流入が考えられるという点が見えてきた。今後はこのような点を実地調査に基づき深めていく必要がある。
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