研究課題/領域番号 |
26780223
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
竇 少杰 立命館大学, 経営学部, 助教 (30600556)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 労使関係 / 生産現場 / 中国 / 仕事管理 / 人的資源管理 / 製造企業 / 非正規雇用 / 組織業績管理 |
研究実績の概要 |
本研究の研究目的は、代表性のある中国現地企業4社での現地調査を通じて、各社の組織全体を視野に置き、組織業績管理、人的資源管理の実際を正確に観察し、『労働契約法』実施以来の中国企業の生産現場における労使関係の真の姿を解明することである。そして初年度の2014年度の実施計画として、本研究の研究背景となる中国企業を取り巻く社会的環境を把握し、組織業績管理と人的資源管理の観点から調査対象企業の組織構造と労務管理を概括的に明らかにすることが主たる課題であると設定した。 この実施計画に沿って、2014年度においては、対象企業4社をすべて訪問し、初段階の現地ヒアリング調査を実施した。国有企業電機メーカーA社でのヒアリング調査では「正規労働者+農民工+実習学生」といった生産現場の柔軟な雇用管理が実施されていることが確認できた。国有企業自動車工場B社でのヒアリング調査では派遣労働者へのマネジメントの状況、およびその苦闘が観察できた。民営企業電機メーカーC社と自動車部品メーカーD社でのヒアリング調査では、 SNSアプリを活用した新たな現場管理のあり方や「派遣社員として入社して真面目に働いていたら正社員へ切替える」といった労務リスクを避ける方法などが確認できた。つまり、中国企業の製造現場は2008年から施行された『労働契約法』から大きな影響を受けており、各社は様々な対策を練りながら労務リスクをできるだけ最小限に抑えようと努力されていることが確認できた。 実績として、2014年7月の日本労務学会全国大会にてB社の事例をまとめて報告し、学会報告で頂いたコメントや指摘を踏まえてまとめた論文を大学の紀要『立命館経営学』に刊行した。他の事例は整理中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施計画では、2014年度は①社会的環境を把握し、そして対象企業4社の②組織構造と③人的資源管理を概括的に解明することであった。 ①社会的環境の把握について、北京大学の人的資源管理の専門家の先生や産業協会の実務家の方々との議論を通じて、2008年『労働契約法』の施行によって形成された中国の雇用環境をある程度認識できた。 そして②と③について、対象企業でのヒアリング調査を通じて、各社の組織構造のあり方、そして人的資源管理のあり方を、ルールの内容とその運用を確認することを通じてある程度把握できた。 追加ヒアリング調査が必要なところは若干残っているものの、研究の第2ステージへ推進していくことができると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画によれば、2015年度の達成課題は、主に対象企業4社に対してヒアリング調査を行い、生産現場の仕事管理を解明することである。特に製造現場において、多くの中国企業は日本企業の生産管理法を学び、「5S」や「TPM」などを導入しようとしている。しかし非正規雇用が溢れる生産現場において、それがうまく実施できていないのは現実である。 今年度において、これまでの調査から得た知見を踏まえながら、対象企業4社に対してそれぞれの生産管理や組織業績管理などについてヒアリング調査を行うことを通じて、①各社の組織構造および各内部組織の機能、②各社内組織間の調整プロセス、短期的収益の確保と中期的成長の展望との葛藤、部分利益と全体利益との葛藤、および生産現場におけるPDCAの回し方、③労働者の採用、育成、配置、賃金管理などの人的資源管理のあり方、および『労働契約法』が①と②に対する影響、の正確理解を実現していきたい。これが研究の第2ステージである。 2016年度の最終年度において、前年度から繰り越した各種の考察・分析作業を継続し、それまでの調査不足に対して追加調査を行いながら、中国の労働者派遣会社に対してもヒアリング調査を行い、労働者派遣業の実態を把握する。また、総合的比較・分析とまとめを実施し、学会発表や論文投稿、および著書の刊行などを通じて、研究成果を積極的に社会へ公表していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額が小さかったため、繰り越しにした。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越しとした残額と今年度の予算を合わせて利用し、夏期と春期の現地調査の経費としたい。
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