研究課題/領域番号 |
26780228
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大木 清弘 東京大学, 経済学研究科(研究院), 講師 (20611073)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 海外子会社 / 多国籍企業 / 国際経営 / 拠点間競争 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「拠点間競争が海外子会社のどのパフォーマンス指標に影響を与えるのか」と「拠点間競争がどのような条件下で有効となるのか」を明らかにすることである。今年度は文献調査と企業調査を通じ、仮説構築と測定尺度の探索を行うことが主目的だった。 まず、拠点間競争が影響を与えるパフォーマンス指標に関する仮説構築を試みた。拠点間競争に関する既存研究の調査の結果、明確に財務パフォーマンスや市場パフォーマンスとの関連を指摘している研究はほぼなく、組織パフォーマンス(工場の生産性など)やポジション(役割の幅)との関連を指摘する研究が多いことが明らかになった。企業調査でも、拠点間のベンチマーキングなどの競争圧力は、生産性改革の促進や、企業内の地位向上を促す効果があることが確認された。 次に、拠点間競争が有効となる条件だが、競争が有効に働きうると考えられる条件を探索的に検討した。結果、外部環境(外部競争・市場変化・技術変化の激しさ)、内部環境(他拠点との協調関係)、海外子会社の状況(自律性)、本国拠点の協調・競争への関わり方が挙げられた。 測定尺度については、上記変数について既存研究から吟味した。さらに、2013年に当該研究者が行った質問票調査のフィードバックを回答企業に行うことで、質問票の分かりづらい部分、パフォーマンスに関係しうる他の変数を議論した。 今年度の成果としては、当該研究者の拠点間競争に関する事例研究をまとめた研究がInternational Journal of Productivity and Quality Managementに掲載された。さらにその研究をAcademy of Managementでも発表した。この研究は、拠点間競争がパフォーマンスに影響を与えることを事例から示した点で、本研究のベースとなる研究である。また、文献調査をベースにした論文も執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、仮説構築と測定尺度の探索を行うことを計画していた。 仮説構築に関しては、文献調査と企業調査から「拠点間競争が組織パフォーマンスやポジションに影響を与える」という仮説が構築された。その一方、拠点間競争が有効となる条件については、多様な条件が考えられることが明らかになった。このように多様な条件があるため、拠点間競争が有効になる条件については事前に仮説を立てるのではなく、質問票調査を通じて探索的に明らかにすることにした。以上から、仮説構築は概ね順調といえる。 測定尺度については、上記の仮説や拠点間競争が有効となる条件によって、質問票調査で尋ねるべき変数を特定できたため、各変数を測定するために最もふさわしい変数を、既存研究から吟味中である。さらに、2013年に行われた質問票調査のフィードバックを通じて、質問票調査の文言や、その他に加えるべき項目などを検討している。よって、測定尺度の作成も順調である。 以上から今年度の研究進捗状況は、概ね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降、最も重要なのは質問票の作成段階で企業の協力をあおぎ、プレテストを行うことである。そのためには企業調査・プレテストへの協力企業を集めることが必要となる。この点に関しては、当該研究者が2013年に行ったタイの日系企業への質問票調査の企業50社、及び当該研究者が現在運営に携わっている東京大学ものづくり経営研究センターの協力を得ることができるため、対応可能である。 次に、質問票の配布先であるが、より多数のサンプル数や高い回収率を目指すために、産業や国をどこまで限定すべきかを改めて検討する。当初の計画では、中国、及び東南アジア(タイ、マレーシア、インドネシア)の、電気機器・輸送機器・機械・精密機器産業の海外子会社を対象としていたが、国としてはベトナムやシンガポール、産業としては化学産業や金属産業も加えたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、学会参加および企業調査を当初よりも活発に計画したため、概算よりも旅費が多くなった。そのため、当初予定をしていたPCを買うには予算が不足し、PCなどの物品を購入することができなかった。 一方、研究を進めるにあたって、当初の予定よりも質問票調査の対象とする企業や国を増やす必要が出てきたため、来年度以降に質問票を配布・作成する際やフィードバックレポートを作成する際に、より多くの予算が必要であると考えた。 これらの事情を踏まえ、当初予定していたPCを購入できない以上、他の物品を買うのを控え、来年度以降の質問票調査のために、10万円を残すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
10万円の予算は質問票の送付先を増やすために遣う。10万円あれば、質問票の送付先を300件ほど増やすことが可能になる。サンプルとなる企業を増やすことで、研究の頑健性を向上させることを狙っている。
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