研究課題/領域番号 |
26780232
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
高 永才 甲南大学, マネジメント創造学部, 准教授 (40508561)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 産学官連携を通した事業化 / 産学官連携の初期体制 / 産学官連携の技術安定期体制 / 企業間調整体制の変化 / 製品モジュラー化 / 企業間調整のモジュラー化 |
研究実績の概要 |
H26年度の目標は産学官連携に参加した企業を対象に「実用化・事業化に成功したプラットフォーム企業とニッチ企業にみられる組織内部のマネジメント」を明らかにすることであった。しかし、H26年度(2015年3月)まで研究の対象であった「次世代エネルギー・社会システム実証プロジェクト」の参加企業は、実証に参加しており、事業化を進める企業はほとんど存在しなかった。唯一、事業化を進めていただのは、実証プロジェクトで行った技術開発と類似した技術開発をすでに社内で行っていた企業(例えば、積水化学工業)であった。 事業化を進めていた企業の特徴としては、実証プロジェクト参加以前に類似した技術で事業化を進めていたことさらに、関連製品がすでにモジュラー化が進んでいたことをあげることができる。 インタビューや講演会の内容からするとこれら事業化は、事前に類似した事業を展開した企業であっても実証の初期段階(最初の2年から3年)では見られない現象で、実証の最後の3年目以降において実施可能であったことが明らかになった。つまり、技術が安定した3年目以降は、関連部品や製品を市場で購入することによって、製品やシステムを作り上げることが可能な段階になっていたということである。 ただ、事業化を行った企業もそうでない企業も技術が安定する実証開始後2-3年目までは、実証プロジェクトの組織作りに焦点が当たっており企業間でのコミュニケーションが頻繁にあった。それに対し技術が安定した3年目以降は製品やシステム間でエラーが出ないような運用の仕方に企業の焦点が移っていた。この段階になると個別企業は製品モジュラー化によって自社製品と連携する製品の開発企業とのみ連携に関する調整を行っていた。つまり、調整もシステムアーキテクチャを反映しており、このことから産学連携の各段階(技術発展の段階)によって調整の体制が異なることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H26年度の目標は産学官連携に参加した企業を対象に「実用化・事業化に成功したプラットフォーム企業とニッチ企業にみられる組織内部のマネジメント」の解明であった。しかし、対象としていた「次世代エネルギー・社会システム実証プロジェクト」がH27年3月末まで続いており、その時点で参画企業の中で実証の成果を事業化に結びつけた企業はごくわずかであった。また、そうした企業も実証プロジェクトの参画前から事業を展開していた企業であった。 ただ、いくつかの企業は社内で実証プロジェクトの成果をどのように生かせるかを検討しているといっており、今後、実証プロジェクトの成果を実用化・事業化に結び付けた企業の組織マネジメントは観察可能であると推測できる。
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今後の研究の推進方策 |
産学官連携つまり「次世代エネルギー・社会システム実証プロジェクト」の成果をいくつかの企業はすでに事業化しており、その他の企業は社内で検討中であるという回答であった。 社内で検討中であるとした企業は、実証プロジェクトから得た成果を社内の事業化組織がチェックし、どの事業に活用可能であるかを検討中であると話していた。つまり、実証プロジェクトの成果が実用化・事業化に結び付くには社内で成果の付加価値を認識し、選択するプロセスを経る必要があることが明らかになった。今後は、具体的にどのようなプロセスを経て、実証プロジェクトの成果が選ばれるのか、またはそうでないのかをインタビューを通して明らかにする。それと共に、産学官連携を経て得た成果をもってプラットフォーム企業となる企業とニッチ企業になる企業との差を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
H26年度に海外の学会にて産学官連携の事業化、実用化の内容を基に学会発表をする予定であり、それに伴う旅費や翻訳費用が必要となる予定であった。だが、国内の学会発表となったために次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度は海外の学会にて産学官連携の事業化・実用化の内容で学会発表を行うことで、次年度使用額を消化する予定である。
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