平成28年度は,前年度に引き続き,消費者のテレビ視聴行動の分析を行った。マーケティングではテレビ視聴行動データはテレビCMの広告効果測定に使われることが多いが,本研究では消費者のテレビ視聴行動を理解することを目的とした。分析モデルは直接効用モデルまたは離散・連続モデルを利用した。提案モデルは,視聴者は1日のテレビ視聴可能時間を制約として,効用が最大となる番組ジャンル視聴時間(ニュースやバラエティー,ドラマなど)を選択すると仮定する。モデル内には,視聴者の番組ジャンルに対する選好度と飽きの速さを表す飽和度を表すパラメータが含まれており,消費者の番組ジャンルに対する態度を理解することが出来る。階層ベイズモデルを利用することで,家計ごとのパラメータを推定し,家計属性との関係も分析を行った。実データを用いた実証分析では,(1)多くの家計は平日と休日で視聴行動が異なる,(2)平日は「ニュース/報道」ジャンル,休日は「バラエティー」ジャンルに対する選好度が高い,(3)「趣味/教育」ジャンルは短時間の視聴で満足する,などのことが示された。また,各家計のパラメータ推定値を用いてクラスター分析を行ったところ,平日・休日でほぼ同じ視聴傾向を持つセグメントと,平日・休日で大きく異なる視聴傾向を持つセグメントがあることが示された。これらの結果は,番組のレコメンデーションやCM出稿戦略へ応用できると考えられる。ここまでの研究成果は,国内学会と国際学会で発表を行い,学会誌へ投稿中である。 一方で,将来の効用をモデルに組み込むところまでは進めることが出来なかった。消費者はテレビの視聴に際し,1週間のうちで決まった番組を視聴する傾向にあると考えられる。よって,将来視聴する番組を考慮して,現在の視聴番組を決定している可能性がある。この点をモデル化することを課題とし,引き続き研究を続けていきたい。
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