本研究「高製品関与型バラエティ・シーキングの理論枠組みの精緻化に向けて」の目的は、特定の製品カテゴリーに対する興味関心が高い状態(高製品関与状態)で生起する消費者のバラエティ・シーキング(多様性追求)を体系的に捉えるため、その理論枠組みを構築し、その精緻化を図ることである。今年度は、昨年度までに行った先行研究レビュー、購買データ(ID-POSデータ)と質問調査データを紐付けたデータの分析結果を踏まえ、探索行動としてのバラエティ・シーキングの包括的モデルの導出を行った。 探索行動そのものは高関与行動であり、探索行動としてバラエティ・シーキングを再規定するとバラエティ・シーキングは高関与行動とみなせる。本研究が高製品関与型バラエティ・シーキングと呼ぶ探索行動としてのバラエティ・シーキングを捉えることは、複数ブランドの購買をバラエティ・シーキングとみなしてきた先行研究に対し、消費者の心的側面(バラエティ動因など)を踏まえる必要があることを提示する。この点は、ブランド・ロイヤルティを行動面のみならず態度面からも捉える必要性があることと同じ構図である。 加えて、探索行動としてバラエティ・シーキングを捉えることは、従来のブランド・スイッチング(購買)のみならず、継続的情報探索(ongoing search)との関係の中で捉える必要性が提示された。消費者の探索行動の顕在的行動は、ブランド・スイッチングなどを含む購買のみならず情報探索も含まれ、そして、両者が密接に関連しているためである。 このように本研究はバラエティ・シーキング研究に新たな視点を提供し、高製品関与型バラエティ・シーキング、すなわち、探索行動としてのバラエティ・シーキングを捉えるための理論枠組みを提示している。
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