研究実績の概要 |
本研究の目的は, 多国籍企業において製品ブランドが市場導入の地理的範囲により3つの類型(グローバル・ブランド, リージョナル・ブランド, ローカル・ブランド)に区分される現象, および当該企業が製品ブランド類型間での一貫性(consistency)やバランスを考慮する現象について, その諸要因をインタビュー調査に基づき明らかにすることである。 製品ブランド管理(product brand management)研究は1990年代初頭から勃興し, その初期には「ある製品ブランドに対して消費者が抱くイメージの形成原理解明」や「当該研究の方法論探求」といった基礎的な課題に焦点が当てられた。そして2000年代以降は, 製品ブランドの中でも「グローバル・ブランド(global brand)」の管理問題が大きく注目されるようになった。グローバル・ブランドとは,主要先進諸国を中心として世界的に市場導入され,海外売上高比率が高く,さまざまな利害関係者によって肯定的に評価された製品・サービスの名称であり, 製品ブランドはある1ヵ国のみで市場導入されるローカル・ブランド(local brand),ある地理的地域で市場導入されるリージョナル・ブランド(regional brand),そしてグローバル・ブランドに類型化される。 多くの製品ブランドを有する多国籍企業において,ローカル・ブランドやリージョナル・ブランドのほうがグローバル・ブランドよりも圧倒的に数が多いものの, 世界連結売上高に対する貢献ではグローバル・ブランドのほうが他の製品ブランド類型よりもはるかに高い傾向にある。そのためグローバル・ブランドのみに目を奪われがちであるが, より重要なことは各製品ブランド類型での数の多寡や売上高への貢献のみならず,それぞれの多国籍企業全体の戦略に沿った一貫性やバランスに着目することであると考えられる。
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